沙也可 公演情報 (株)フリーハンド/(有)Yプロジェクト「沙也可」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    史実(豊臣秀吉の朝鮮出兵)に恋愛物語を織り交ぜた壮大な歴史絵巻。主人公・沙也可はもともと日本人であったが、生きるため、愛する人のために終の棲家を朝鮮に求め、子孫(遺伝)を絶やさなかった。
    終演後、その末裔に当たる方が舞台挨拶に立った。沙也可は韓国の歴史教科書にも載るほどの有名人物で、鹿洞書院に奉られ、その隣に友好記念館が建てられているという。

    遺伝と言えば、主人公を演じた田村幸士さんは、祖父が阪東妻三郎、伯父が田村高廣・田村正和、そして父は田村亮という役者一家。やはり血は争えない見事な熱演であった。

    (上演時間2時間30分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    高さの違う平行舞台。そこに分割・可動できる階段をかけ、情景や殺陣シーンに応じて左右等に動かす。階段の昇降によって躍動感が生まれ臨場感が増し、同時に殺陣空間の確保もする。後景には荒海の映像や旋風イメージの照明が色彩豊かに映し出される。衣装は日本武士は武具を身に着け、朝鮮女性は色鮮やかなチマチョゴリで照明に映える。

    物語は豊臣秀吉の朝鮮出兵(日本では文禄・慶長の役)に加わり、後に沙也可(日本名は雑賀孫六)と名乗る男がこの戦いへの大義の疑問、彼の地における朝鮮人との恋愛や親交を通じて朝鮮人として日本側(同胞)と戦う決意をするもの。民族とは?悲しみの先にある負の連鎖、その(思考)過程における苦悩や葛藤を情感豊かに紡いでいくのだが…。まさしく「海峡を越えた愛と慟哭の壮大なドラマ」だ。

    朝鮮の人になる過程(描き方)の多くが、朝鮮人女性・金美姫(夕貴まおサン)を助けた時に負った傷を治すため留まった村の人々との触れ合いによって心が動かされた(恋愛中心)もの。結末はタイトルから そうなるんだろうな と いう予定調和であるが観(魅)せるような美しさはある。
    当時、日本の出兵事情は秀吉と家康の会話から、天下平定後の論功行賞としての知行地がないことから、明(中国)攻めを考えた。手始めに朝鮮出兵をするということが、台詞でサラッと語られるだけ。

    登場しない人々を想像してしまう。雑賀孫六は雑賀衆の統領(近畿圏出?)で この出兵した武士以外、日本に老人、女、子供が残っているのではないか。出兵した男たちは朝鮮人女性との幸せが待っているようだが、残された者は秀吉の怒りにふれ残党狩りされそうな…。冒頭で、信長の命により侵攻した秀吉軍に抗し敗れ、長い年月を経て流れ着いたのが九州肥後の国(今の熊本県)と説明。朝鮮出兵に加わったのも、一族の再興を図るため。苦難を共にしてきた一族郎党との決別、その苦悩・葛藤がもっと深く描かれても良いのではないか。苦悩はあるが、それは一緒に出兵した者たちとの関係がほとんどだ。朝鮮人として生きるための決意をもっと強く描きこむ必要があった。

    ただ、上演時間が2時間30分と長丁場であるから、どこかの場面を割愛する必要があるかも。であれば、この男が寝返った時に秀吉と家康が相談するところ、または小西行長と加藤清正が城攻めの先陣争いの諍いをするところかな~。いずれにしても少し整理をして日本側との関りを丁寧に描く必要があるのではないか。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2021/09/11 16:51

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