かわいいサルマ 公演情報 人形劇団ひとみ座「かわいいサルマ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    人形劇の「不思議」にもっと魅せられたく、子供向けらしいこの演目にも出かけてみた。劇団アフリカとの共演とあるが、アフリカの童話のバックに3名がジェンベやアフリカ木琴等を生伴奏し、時折ステージにも出てパフォーマンスを行なう(観客参加の振付タイムもあり)。フィーチャリング劇団アフリカの趣きであった。
    10日寝かせた正直な感想は、人形自身から滲み出る蠱惑的な雰囲気とテンポ感が、伴奏音楽に座を譲り、いささか勝手が違った。あくまで私の好みに即せばの話だが、「共存」は十分できたと思うがそれにはパフォーマンスの方を少し控えて頂かねばならないだろう(演出的に恐らく)。
    前半大きく膨らんだ期待が、後半しぼんだ理由を考え中。

    ネタバレBOX

    お話はかわいらしく、ある緊張を持って進んで行く。冒頭、広場でいろんな遊びを遊ぶ子供たち、サルマもいる。ご飯に呼びに来る近所のお爺さんとの和やかなやり取り。サルマは目の悪い婆さんと暮らす家に戻って来た。婆さんはサルマの声に喜び、キスをしておくれと言う。ところが婆さんの方は木の置物を孫と間違えて抱き付いたり、今度は花の鉢植えを孫と勘違いしてチャーミングである。
    お婆さんは早速サルマに町へお使いを頼む。スイカ、鶏、ジュース、等。サルマを知るらしい市場のお店の人たちはお金を受け取って品物を渡す・・大丈夫、大丈夫。
    先ほど「緊張をもって」と書いたのは、生活の営みが人の繋がりの中で成り立つ様は、それが損なわれる因子をその背後に忍ばせているからである。
    お使いの帰路、のどかに見えた町は暮れなずみ、建物や路地の影に紛れるようにして、サルマの道行を追う者がある。正体は犬、なのであるが抱えた物を持ってやると親切そうに接近し、徐々に図々しく、サルマが「お出かけ用」に身にまとったスカート、ベスト、ターバン、イヤリング等も全て自分の物にして去る。彼は満足したわけではなく、サルマをこよなく愛する婆さんもわが物にしようとサルマの家へ向かったのだった。
    ここで、何でも欲しがる犬で連想するのは「千と千尋」のカオナシなのであるが、赤ずきんの狼もサルマの犬も、「与えられなかった者の病理としての欲・孤独」というモチーフが頭をよぎる。
    もっとも童話としてのこのお話は犬が実際に婆さんの家に辿り着き、「おやサルマいつからそんなに鼻が濡れているんだい」「どうして毛がふさふさなんだい」といった赤ずきん風の「見せ場」となるのだが、この「犬も意外とチャーミング」の線を行くなら、この後、村の「神様」に頼んだ村人たちが犬を「コテンパン!」に懲らしめるという挙に出るのがどうもやりすぎに感じられる。何よりも、懲らしめのシーンが長い。水戸黄門なら仰山いる悪人共を成敗するには時間が掛かるだろうが、このお話の犬はさほど強そうでもなく、ただただ「厳しい制裁」の時間が続く。とっくの昔に「反省」してそうなのに。
    ところで私が途中までこの舞台に見ていたドラマは、こうだ。犬はコミュニティの紐帯や信頼を破壊する存在の象徴。サルマの訴えを聞いた村人たちが「闘い」に立ち上がるシーンは、劇団アフリカの地を鳴らすような太鼓の伴奏に鼓舞され、熱くたぎって来るものがある。
    道理を違えた悪なる存在、それは例えば昔、自らの持ち込んだ法を一方的に押し付け利権を構築し現地人を従属させた西欧人であり、未だに南北問題を再生産して改まる事のない現代世界の構造である。そうした存在に、徒手空拳で立ち向かう悲壮かつ楽観的な決意を、微かにではあるが、シーンの背後に見る思いがしたのだった。
    が、犬は熱湯をかけられ、ぶたれ、とことんいじめ抜かれてボロボロにされる。物語的には「痛快」という事になっているのだが、しかし犬はただ人間の言葉を聞き分け悪知恵の働く「人ならぬ者」として存在し、処理されるだけに終わるので、どうもスッキリしないのである。
    子どもたちがどう受け止めたか、心の声を聞きたいところであるが、私は勧善懲悪の「良い側」=「強い側」図式を教え込むだけの教材になってはしないか、と懸念がよぎる。まあ教育問題はさておいて、「感動」の観点から見て私は「子どもを舐めるでない」という思いが起こる。
    それは音楽を活用した演出の問題でもある。音楽を活用する場合、明快なドラマの場面の意味を「増幅」するのに適しているのが音楽だと思う(稀に物凄く微細なニュアンスを表現する阿部海太郎や、殆ど環境音ほどに芝居に同化して気づかせない国広和毅といった音楽家を除いて)。
    「犬」を何のメタファーとしてイメージさせるか、という所に一考が欲しかった。音楽の活用法も変わったのではないか。

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    2021/09/01 02:51

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