実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/08/30 (月) 14:00
座席1階
劇団道学先生は、座付き作家の中島敦彦さんが亡くなってから活動を休止していた。主宰の青山勝が選んだ復活作がこの「おとうふ」だ。中島さんが得意としていた会話劇で、「女3人の芝居を書いて」と座員に言われて1993年に作った作品という。
物語はテレビのバラエティー番組の舞台裏。番組の進行に従って客席で笑い転げる「笑い屋」の女性3人が主人公である。この3人、大道具倉庫のような狭い場所で待機させられ、時間を持て余しておばさんトークを続けるのだが、その3人それぞれに人生の光と影があり、泣いたり笑ったりなのである。どうにもならない人生の変転がおばさんトークで交差する。チラシにある「おかしくなくても笑います」というのはなかなか鋭い一文だと、舞台を見れば分かる。
この女性3人はいずれも客演なのだが、3者3様で非常にすばらしいキャスティングだ。3人ともおばさんトークの「あるある」を存分に表現・体現していて、とにかく笑える。劇団桟敷童子のもりちえ以外はダブルキャスト。両舞台を演じるもりちえは、期待通りというか、期待をはるかに上回るマシンガントーク。結婚4回でそれぞれ父親が違う子供がいるというプロフィールで、噂話と他人の悲劇が大好物のおばさんを演じたが、この早口でセリフをかむことは全くない。また、こき使われているADの青年など、舞台を盛り上げるキャラクターもしっかりそろっていて、最初から最後まで飽きることはない。
小劇場でこそ味わえる会話劇の迫力。緊急事態宣言下、しかも猛暑日のマチネだが満席だ。やっぱりみんな「おかしくなくても笑いたい」のである。