愛でる心 公演情報 劇団龍門「愛でる心」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    大きな愛で包まれ、温かい心持にさせる好公演。
    物語は大きく2つの流れがあるが、その底流には共通した思いがある。それは人の再生というか育成という「愛情」が仄々と、しかし確りと描かれている。まさしくタイトル「愛でる心」である。
    コロナ対策として役者はマウスシールドを着用しており、今では当たり前のようなこと。それでも一瞬、見た目と台詞音声がどうなのか気になったが、全くの杞憂であった。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    上手・下手側に屏風のような衝立、パソコン ソファ(置く位置によって場景が異なる)といった簡素な舞台美術。といっても基本的には2か所であるから、しっかり作り込むと視覚的に場所・情景が固定され、物語の面白さに追いつけないかも知れない。物語の場所は警察署内とその部署に配属された新人刑事の自宅。この部署は何らかの理由によって刑事としての再育成が必要になった者が配属される。この統括責任者が前田本部長(村手龍太サン)で、2つの物語に共通した愛情を渋く演じる。

    物語は刑事部署内に新人が配属され、その担当者になったのが水野淳之サン。彼は10年もこの部署に居るベテランで何故か異動できない。実は10年前、犯人逮捕時に誤射し、それがトラウマになっている。もう1つは、前田本部長は既に妻は亡く、2人の子供(兄・亮介、妹・彩子)がいるが、兄の方とは音信不通の状態。家庭内に波風が立っている。本部長の口癖は公私混同するなであるが、若い女性を署内に連れてくるなど、言っている事とやっている事が違うが、何故か飄々とした態度で誤魔化されてしまう。兄は妹とは連絡を取っており、オカマbarで働いている。妹は売れない劇団員(アンサンブル)でバイトと掛け持ちする忙しさ。2人とも孤独で認められたいという欲求がある。が警察幹部の父としては容認しがたい。親子の相容れない生き方は、どうその人の人格を認めるか。寛容・不寛容は心の持ちようと言えば簡単だが、現実はそう簡単ではない(割り切れない)。その微妙な空気感の演技は上手い。

    登場人物は12人であるが、その1人ひとりの場面を実に丁寧に描く。それによって物語における人物の立ち位置が確りし流れも分かり易い。2つの物語は、付かず離れず最後まで「愛でる心」の核心を包み込んだままであるが、全体の雰囲気が愛情に溢れているのは一目瞭然。この不思議と温かみのある感覚というか雰囲気が公演の最大の魅力ではないか。

    警察署内の新人配属は、実はその育成過程を通じてベテラン刑事の再生を行うというフェイク。一方、自分の子供たち…妹の公演は必ず観に来て、どんな端役であろうが満足して帰る、その見守りが優しい。そして妹がそっと父と兄を自分の公演(指定席で隣り合わせ)に招待する優しい配慮。この父と兄の気まずい様な表情が最高。このワンシーンだけで愛情の深さが解る。確かに「人生はドタバタよ!思った通りなんかいかないし、伝えたい言葉だって届かない。」かも知れないが、少なくとも本公演はドタバタは魅せる力はあるし、設定は在り来たりのようだが、先に記した通り最後まで核心を明かさない。ハートフルでドタバタ人情系エンターテイメントは面白かった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/08/06 23:16

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