アンダーグラウンド・アンソロジー 公演情報 イマシブ「アンダーグラウンド・アンソロジー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    2013年1月バンタムクラスステージ短篇集(https://stage.corich.jp/stage/40885)で上演された2作と、女優主催イベントのために細川博司が書き下ろした1作からなる3本の短編オムニバス。
    過去に観ている2作の面白さは分かっているので作品に不安なく観劇。
    観劇してから分かったことだが3作には2人が銃を向け合うという共通のシチュエーションが出てくる。その割に銃声が響くのは1作のみ、2発だけだ。それが3作を通してほどよい緊張感をもたらす構成になっているように思う。

    3作とも洋画の吹き替え風セリフ満載でいてそれが浮つかない、不自然にならない細川作品の味をしっかりと孕んでいる。緊張と弛緩のコントロールがなされ、観客は一緒に緊張したり緊張を緩ませたり。そうやって翻弄されるのが気持ちいい。暗転明けから緊張の続く最初の「几帳面独白道化師」→暗転明けロリイタ服を着た女性2人が銃を向け合う異常な光景とすぐに始まる心地好いセリフの応酬に惹きつけられる「ステイルメイト」→全体の構造が見事に完成された「ジャガーノート」。3作の並びも良かった。

    劇場での公演は本日までだがアーカイブ配信は後日開始。一見の価値あり。

    ネタバレBOX

    (※敬称略)
    上記に書いた銃声は1作目「几帳面独白道化師」でのみ鳴るが光らないので「バンタムクラスステージじゃない」と思える笑(バンタムクラスステージでやるなら銃声にあわせて光が明滅し、薬莢の落ちる音が聞こえることだろう)(このとき2回撃たれる福地教光の撃たれる演技・こときれる演技が当たり前に良い)。1作目で銃声を響かせておくことで、2作目・3作目でもいつ発砲されるか分からないスリリングさがある。

    2作目「ステイルメイト」は初見。櫻井しおりの声音遣いが素晴らしかった。アニメ声優をされているとのことで納得。諜報員として命をやりとりする駆け引きの声と娘との電話で出す母の声を使い分け、かつ全てが吹き替え風に発せられ観客を楽しませてくれる。
    安っぽいロリイタ服(安っぽく見えないロリイタ服はそれはもうお高いのです)が妙に納得できる設定。登場人物5人のバランスが良い!狙われる必然は分かったが争う必然があまり見えなかったりと甘さはあるものの緊迫感と笑いと人間の妙、いつもながら細川博司は女性をえがくのがうまい。決着についてなんとなく想像できるタイトルも良い。人物の配置が入れ替わるときにさりげなくルームメイトを守る久代梨奈演じるレイク、ちゃんと訓練を受けた諜報員だななんて思わせてくれる。なおこのレイクのコードネーム「ペインキラー」ににやりとしてしまう(細川作品によく出てくる女性工作員のコードネームである)。女性スパイものとしてかっこよく出来すぎであるが満足度は高い。メキシカン・スタンドオフ状態の長かったお二人、ぜったい腕痛いと思う、、お疲れさまでした。

    3作目「ジャガーノート」はとにかく脚本が素晴らしい。4回目の上演となるが今回の出演者がベストではないだろうか。氏家蓮のキンキーからまっすぐな愛情と情熱、そして、痛めつけられているはずなのにしっかりとした頼れる男らしさを感じた(暴力を受けるシーンもうまかった)。梅田悠のペイシェンス、強さも弱さも見せてくれた。土矢兼久のダニー、流暢なセリフ運びが耳によく馴染む。福地教光のチャズ、ついにダニーを卒業したが役としては名前が変わっただけで同じ役をやっており、そのときとはまた違う円熟味ある演技を見せてくれた(同じ役でもダニーではないのだから当たり前なのだろうが)。徹夜明けの疲労が見える演技、刺されかたひとつとっても8年前と異なる見せ方。正統に細川博司が演出し笑いに走りすぎない、あくまでも登場人物達が真剣極まりない状況だからこそ笑いが起こるコメディ。ペイシェンスが真剣にダニーを罵れば笑いが起き、チャズが困惑しても笑いが起き、チャズが手でジェスチャーしながら「戻せ」と言うだけで、半ばパニックのダニーとペイシェンスが言われるまま銃の向きを戻すだけで笑いが起こる。もちろん適切な演技、適切なタイミングが図られて結果として観客を引き込み笑わせるのだ。洋画のような動き、セリフ、物語。ロマンチックで、けして難しくなく見やすい。細川作品の随を集めたような短編。惜しみない拍手を送りたい。

    細川博司が気に入っている状況やセリフなど、こうして3作を連ねるだけで見えてくるのが面白かった。

    なおパンフレットの作品解説および人物解説も興味深く拝見。楽しませていただきました。
    「几帳面独白道化師」は2012年5月4日初演(中之島春の文化祭2012)なので初出が2012年11月19日というのは誤りじゃないかなーなんて。「ジャガーノート」第3稿は2014年8月通称ロクバンタム(https://stage.corich.jp/stage/55523)に向けてでしょうね。初演は2012年5月18日からのLINX'S04(https://stage.corich.jp/stage/33748)、再演は2013年1月短篇集ですから計算が合います。重箱の隅つつきすみません。

    0

    2021/07/25 17:37

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大