カルメン<新制作> 公演情報 新国立劇場「カルメン<新制作>」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    言わずと知れた名作にして、超人気作品。カルメン役のメゾソプラノが、奥深く響く声で、素晴らしかった。日本人テノールのドン・ホセ村上敏明もよかった。「ワルキューレ」のジークムントでは苦戦していたが、今回見事にリベンジを果たした。

    現代日本に置き換えた演出で、冒頭は警視庁の警官姿でずらっと登場する。十分成り立っていたけれど、鉄パイプを組み合わせた無骨なセットは、今ひとつ目が楽しめないのは残念だった。余分な装飾がない分、ドラマと音楽がいっそう浮き立っていたとも言える。

    今回の発見を一つ。カルメンはホセを最初は本当に愛していたのか。ホセに脱走を唆す前、仲間に「恋してるの」というが、唆すところはズルく自分勝手なふるまいで、あまり愛にともなう真心を感じない。ホセも脱走するのは、カルメンの説得に従ってではない。上官への嫉妬と、暴力をふるったいきがかりからやむを得ず、となる。この展開は、細かいところだが、リアル説得的である。二人の関係の、そもそものズレを示して、後の悲劇の伏線になる。

    ネタバレBOX

    数年前に、雑誌にカルメンと樋口一葉のにごりえは人物構図がそっくりとい話を書いた。そもそも奔放な自由な美女と、家庭的な素直な女性との対比は文学の定番。「風と共に去りぬ」でも、漫画「東京ラブストーリー」でも。漱石「虞美人草」「三四郎」にも共通するが、少々通俗的とも言える。(「明暗」も、久々に同じ構図を描こうとしたと言える)

    学生時代、一緒にいてドキドキする女性がいいか、落ち着いて自然に接しられる女性がいいかという議論をよくした。恋は心ときめくものだから、後者の女性への感情は恋ではないのではないかとか。今ではドキドキするエネルギーがこちらにないけど、今もう一度若返ったら、どうするだろうか。

    女性はどうか、聞いてみたら、そんなこと考えたこともないそうだ。ホセか闘牛士かといえば、マッチョな男は嫌いだから、ホセの方がいいと。
    すると、カミーユよりカルメンを選んだホセも、ホセより闘牛士を選んだカルメンも、常人とは逆の選択をしたことになる。憧れが投影された芝居ということか。

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    2021/07/23 11:41

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