二等兵物語 公演情報 ★☆北区AKT STAGE「二等兵物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    つかこうへい作品の中で一番好きかも知れない。従軍慰安婦を使ってこんな芝居を書くとは流石である。「表現の不自由展」に今作を出品して欲しい程。操作された政治的解釈で捻じ曲げられてゆく歴史に騙されて欲しくはない。
    朝鮮人慰安婦役の鈴木万里絵さんがとにかく素晴らしい。時間が立つ程にその存在は膨らみ続け、終演後は彼女の事で頭が一杯になるであろう。菩薩のように全ての苦しみを受け入れ過ちを許してくれる存在。ぼろぼろと涙が零れ落ちる客席、この内容を若き女性層がきちんと理解して受け止めている様子が美しい。
    開幕からいきなりサビにいくような強烈なスピード感。満州の落ちこぼれ部隊を任された小隊長(草野剛〈たけし〉)、純情な東北の百姓二等兵(尾崎大陸〈りく〉)、従軍慰安婦(鈴木万里絵)の三人の物語。綺麗事では終わらせない肉体を伴った人間観。吐き気がする程醜悪で同時に余りにも澄み切った心を併せ持つ日本人、その矛盾すら引っ括めて見事に具現化してみせた。
    ちょっと観てみて欲しい。

    「スナック満洲」のチーママ、井上怜愛(れいあ)さんが綺麗だった。(23歳であの貫禄)。

    ネタバレBOX

    二等兵と慰安婦の遣り取りが凄い。「手持ち時間四十分を休憩に充ててくれ」と紳士然とした男。肩を揉んだり故郷の話やロマンティックな話で女の心を解きほぐすも、急に豹変して三回無理矢理伸し掛かる。怒り狂った女が「あんたは本当、日本人そのものね」との名台詞。それでも男は「一緒にここから逃げよう」と口説き始める。狂った展開だが、不思議と凄く納得の行くものに仕上がっている。人間と人間がガチンガチン存在をぶつけ合っている様な感触。脱走を計る二人だが捕らえられ、男だけが銃殺される。

    ラストは三十年後の日本、小隊長と所帯を持っている女の下に満州から亡霊となった男が迎えに来る。時空を越えた「雨月物語」。

    キャラ設定が秀逸。ああ、成程と伏線に感心するようなシーンが幾つもあった。鈴木万里絵さんの象徴しているものが凄く重い。日本側から描いた慰安婦モノの最高傑作。

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    2021/07/09 23:07

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