実演鑑賞
満足度★★★★
ロック調のミュージカルに、現代を舞台に、エネルギッシュなダンスシーンが見どころの、若者向けのロミジュリ。キャピュレット家の家族関係を、原作以上に彫り込んでいるのも、奥行きが増した。キャピュレット夫人の意外な告白には驚いた。
ジュリエットの乳母役の原田薫が、ユーモラスとお茶目さがあって、彼女の歌うシーン「あの子はあなたを愛している」は、若さと悲劇のエネルギッシュな舞台の中の、無垢な献身を見せる一服の清涼剤であった。自由を謳った「世界の王」も、カーテンコールでも歌われたが、いい曲だった。
最後のロミオとジュリエットの死の場面は、背後に、十字架とキリストの磔刑像が大きく配されて、二人の死が、単なる愛の死ではなく、争い合う人類のための贖罪の死に高められていた。キリストの死と重ねられていたわけである。残された親たちの歌う歌にも、「神はなぜ二人を見捨てたのか」という言葉がある。これもキリストとダブル。カトリック国フランスらしい演出だと思った。一番のテーマ曲の「エメ」は、おそらく「アーメン」である。こんなところにも、演出の宗教的強調がある。
約3時間5分(休憩25分)。