容疑者Xの献身 公演情報 ナッポス・ユナイテッド「容疑者Xの献身」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    初演は2009年、キャラメルボックスで、座付きの作者による作・演出だ。劇団は数年前に消滅したが、石神哲哉役の筒井俊作、天才科学者・湯川学教授役の多田直人をはじめ、
    渡邊安里(女主人公)主なキャストは残っている。脇役には懐かしいキャラメルボックス風のマンガ演技なども見られる。観客も引き継いでいるらしく、二十歳前半も含め観客は若く、舞台にやさしい。しかし土曜日夜6割と言う入り。6,800円は高いのかもしれない。
    原作はミステリの賞も受けている人気作家の代表作だ。専門作家だけあって、ミステリ的な企みが至る所に張り巡らされている。劇化の大きな難関になるのは多視点で展開しなければ成立しない物語構成になっているところだ。それはアリバイ崩しがメインに置かれているミステリの宿命でもあるのだが、成井豊の脚色は語りをうまく使って、入りくんだ原作の要素をすべて取り込んで、どんどん進む。話は賞を受けたくらいで面白くできているから若い観客は吞まれたように見ていて最後には温かい拍手で終わる。
    原作を一気読みで見ているような感じである。その分、大学生時代の同級生が、敵味方になって謎を解きあう、とか、女主人公の人間性などは薄味になってしまった。舞台のテンポも演技も一本調子で膨らみがない。キャラメルボックスである。
    ひさしぶりに舞台を観て、やはり、ここと、スタジオライフはいま多く演じられている2・5ディメンション演劇への道を開いたと思う。その功罪は一言では言えないが、どこも観客が純朴な十代から20代の若者であったことは考えていいだろう。夢の遊民社も第三舞台も最初はそこから出発した。脱皮していった彼らの後に観客だけが取り残されたような気もする。

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    2021/05/30 12:01

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