夏祭浪花鑑【5月6日~5月11日公演中止】 公演情報 松竹/Bunkamura「夏祭浪花鑑【5月6日~5月11日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ネタばれ

    ネタバレBOX

    コクーン歌舞伎の『夏祭浪花鑑』を観劇。

    喧嘩っ早いが義理人情に厚い団七は喧嘩が原因で牢に入れられるが、国主・浜田家の諸士頭・玉島兵太夫の尽力で解放され、女房と息子に再会する。だが玉島兵太夫の息子・磯之助と恋人・琴浦の仲を悪人によって引き裂かれようとするのを団七、徳兵衛と妻、そして釣船の三婦と協力して助けようとうするが、団七の義父・義兵次が邪魔をし、日頃の悪行への鬱憤から彼を殺めてしまい、追ってから逃げ惑うのであった…。

    中村勘三郎と串田和美による『渋谷で歌舞伎を!』を合言葉に始めた芝居。
    あまりにも面白すぎたのか、再演、再演の連続、海外での公演と伝説化した舞台である。今回は息子たちが父親の役を演じている。

    ここからネタばれ
    何が伝説化したか?
    義父を殺めて、追っ手から逃げて逃げて逃げ回る団七が観客席を縦横無尽に走り、遂に逃げ切ったかと思いきや、劇場の突き当たりの大扉が開いて、渋谷のネオンを背景に本物のパトカーは劇場内に突っ込んで来て、「団七、無念!」という終わり方に観客全員が唖然としたのである。
    当時は紅テントを中心に舞台壊しというのがよくあったが、「まさかシアターコクーンではあり得ないでしょう?」という観客の固定観念を打ち破ったのだ。だから伝説化したのだ。今回も再演なので同じ事を期待していたが、「どうやら違うらしい?」という声が出始めていた。
    義父を殺した後、逃げてまわっている団七が庶民に混じり、そのまま大扉が開き渋谷の街並みに逃げて行くので、
    『伝説になった大扉の開閉がこんなにも簡単に開いちゃうの?』
    『こりゃ、蜷川幸雄の近松心中物語と同じラストシーンではないか!』
    と文句を言っていたら、そんなことをしないのが串田和美の美学である。
    そこから新たに話が続くのであった。
    団七は己が犯罪者だと認識の下、妻と離縁して徳兵衛に預けて逃げる決意をする。徳兵衛の手助けにより追っ手から逃げ回り、遂に大扉まで追い詰められ開くどころか開きやしない。「きっと何かがあるぞ?」と初演を観た観客は期待するが、決してそうはいかない。「団七、もはや無念!」と思いきや彼らのとった行動は…?
    初演を観た観客は伝説の大扉の扱いを知っているからか、今作を何倍にも楽しめるようになっているが、それ以上に初演と違うラストシーンにまたもや唖然とさせられるのである。
    『伝説の舞台の再演!』と謳っているが、別作品に仕上げてきた串田和美のアングラ精神にはただただ感服させられるのである。
    たがシアターコクーンはなくなるので、伝説の舞台を観ることは永遠に叶わないかもしれない…。

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    2021/05/29 23:39

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