実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2021/05/25 (火) 14:00
座席1階C3列7番
まず、今敏のアニメの舞台化表現についての評価。
舞台に段差を現出させ同時進行の話をうまく並行化して見せたり、段差は、その他ビルの屋上、電車内の風景、河川沿いの道端などになり、よくぞ多種多様な光景を見せた。細かい舞台小物の置き換えで、路地、墓場、廃屋、公園、病院、都内一周ロードムービーの場面転換を手際よく展開する手腕には、ただただ肝心するしかない。
特に、ラスト近く、赤ん坊を負ってのカーチェイスの場面は、タクシー、トラック、自転車、皆ハンドルと乗り手の配置だけで、疾走感一杯に再現される。
「東京ゴッドファーザーズ」の二次元を、舞台という生の時間的・物質的制限の中で再現した事実には、拍手を送りたい。
松岡、マキタ、みゆきの呼吸もよく合い、ストーリーは淀みなく進み、そう私の知っている「東京ゴッドファーザーズ」のラストのみゆきと父の邂逅シーンに至るのだ。
とここまで書いてきて、私は何を観ていたのかとふと考える。私は何を観ていたのかと。
私は、舞台を観ながら、常にアニメの場面を頭の中で再現していた。あのシーンだ、このシーンだ、そうアニメと比較しながら。私は舞台を観に来たのか?
この舞台を観に来た人は、今敏のファンという方も多いだろう。予習としてアニメを観てきた人も多いと思う。さて、まっさらで観た方々は、どんな感想を持ったのだろう。ある意味、その無垢な鑑賞眼は、この舞台をどう評価するのだろう。
うーん、私にはあの傑作アニメの舞台での再現を観ることしかできなかった。だとすれば、
この公演にあった価値は何だったのかな、と思う。今敏マニアとしては満足、でも舞台演劇として何か楽しめたもの・発見しえたものはというと、それが出てこない。