夜から夜まで 公演情報 劇団競泳水着「夜から夜まで」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    表層的には身近にもありそうな恋愛劇。といっても優柔不断で曖昧な関係で満足している、もしくは進展を望んでいない男女の不器用な恋物語といった方がピッタリとくるか。この公演、恋愛話が淡々と展開していくだけのようだが、不思議と観入ってしまう魅力がある。
    一方、どことなくコロナ禍を意識した描写があり、これも世相を反映させているのであろうか?物語は男女の感情や社会状況について、それぞれの憤懣やる方ない思いをしっかり伝えたいというメッセージが込められているかも。「劇団競泳水着、5年ぶりの本公演」…面白かった!
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術はシンプルで、その意味では男女の関係性の変化を際立たせる観せ方になっており、理に適っている。舞台を一段高くし、中央に横長椅子、上手側に円形カウンターテーブル、下手側に丸椅子が2つ。段差を設け、その上下の動作によって場面(情景)の変化を観せる。

    梗概(説明から)…曖昧な関係(セフレ状態)を続ける祐平と咲。咲は、結婚3年目の友人・朋子から不倫していることを打ち明けられる。朋子の不倫相手・陸と知り合った咲は、陸に惹かれていくが、必死にその気持ちを抑える。やがて朋子は陸との不倫を終わらせる。それを知った咲は、祐平との関係を解消し陸と付き合う。一方、咲に去られた祐平は、元恋人やデリヘルで出逢った女性らと関係を結ぼうとするが、空回りを繰り返す。ある日、祐平、咲、朋子の三人は、延期となっていた知人の結婚パーティーで顔を合わせることになったのだが……。

    どこかシャイで不器用な20歳半ば~30歳代半ばの男女、彼ら彼女らのどこか虚ろで鬱屈した思いが愛の決定打に欠け、真の”愛”を求めて彷徨している。そんな雰囲気が漂う少し切ない青春群像劇は、遥か昔の自分を見るようで甘酸っぱい気持にさせる。たびたび出てくる「東京は広い」という台詞は、多くの人が住んでいる割には、自分の心を満たしてくれる人との出会いが少ない。
    コロナ禍の状況下にあっては、なおさら会って話をする機会が減っていることを表している。インターネットを通じた会話は、現代風とも思えるが、東京という大都会の中でのある種の”孤独”をも思わせる。何となくタイトル「夜から夜まで」に寂寥感を覚えてしまうのもそのためであろうか。

    コロナ禍は、先に記した憤懣やる方ない思いを吐露する場面において、わざわざマスクを着けて叫ぶ。そこに本音を叫ばずにはいられない苛立ちが見える。かと言って暗く重い展開ではなく、どちらかと言えばカラッと乾いた雰囲気である。そこが淡々とした日常を思わせる。
    もどかしい恋愛事情にコロナ禍という閉塞感を重ね合わせた物語(展開)は、観客を今状況に上手く取り込んだ会心作といえるだろう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/05/15 15:25

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