囲まれた文殊さん【4月27日~4月30日公演中止】 公演情報 秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場「囲まれた文殊さん【4月27日~4月30日公演中止】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2021/04/22 (木) 14:00

    座席1階

    京丹後市の経ケ岬にある文殊の神様は、左を自衛隊基地、右を米軍基地に囲まれているという。Xバンドレーダーが配備され、ミサイル防衛の任務をしているという。しかし、もし仮に中国や北朝鮮からミサイルが飛んできたとしても、数分で日本に到達するミサイルをレーダーがとらえて(とらえたとしても)イージス艦に伝えて迎撃ミサイルで撃ち落とすのはほとんど不可能とされている。結局は、グアムなど米軍基地を守るための装備であろうと言われ、じゃあ、この基地は日本国を防衛するのに役立つのか、という話だそうだ。
    前置きが長くなったが、そういう基地を作るために肩身の狭い思いをしてきた文殊さんを通して、この舞台が問いかけることは多い。

    まずは、言うべきことは言わねば、ということだ。主人公の青年の実家で、その父親は米軍基地の建設にずっと反対をしてきた。今も反対をしている。沖縄もそうだが、基地で働いている地元民も多く(この舞台でもこのお父さんの義妹が営むクリーニング店が米軍人も重要顧客。基地でバイトしている女性も登場する)、反対運動を快く思っていない人は少なくない。だが、このお父さんは地域統合のシンボル的存在であった文殊さんに、毎日お参りをしながら反対運動を続ける。
    もう一つは、反対運動によって地元が分断されないようとことん相手の意見を聴く、という姿勢だ。意見は違ってもお互いを認め合う、ということだろう。いずれも、とても大切なことだと思う。

    この舞台のいいところは、そうしたメッセージを単に基地反対というワンイシューで語るのでなく、コロナウイルス患者に対する差別、という視点でも切り取っていることだ。地元に一人も感染者がいないため、東京から帰省する若者への風当たりは非常に強い。全国どこでも、今でもそういうことが起きていると思うが、感染者への差別はコロナ患者を診る医療従事者への差別につながり、感染者を取り巻く家族など周囲への差別につながる。「感染させるかもしれないのに東京から来るな」という地元の人々の内なる差別にも真正面から向かい合っている。とても共感できる物語だ。

    青年劇場らしい分かりやすい筋立て、そして鋭いメッセージを発するにもどこか優しさを感じる舞台。今回もしっかりとそれを感じることができた。秘密保護法のために、基地の中を探ろうとする反対運動者が摘発されるかもしれないという怖さもきちんと描かれていた。

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    2021/04/22 17:48

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