実演鑑賞
満足度★★★★
沙翁の名をもじったこの集団の舞台には中々縁がなかったがようやく目にした。シェイクスピアへの拘りの所以は不詳だが遊び心の発露の態様を見た。己を醜く生み落とした創造主へ叛逆するかのように血塗られた道を行くリチャード三世の物語は、以前鵜山仁演出/岡本健一主演の新国立舞台を観て印象にある。悲惨な末路に殆ど同情の余地がないにも関わらず、そこに人間を見る。
舞台は一時間強。黒ずんでシックな能舞台にまず語り手(パンフにはウタイとあり謡い方に当る模様)の男女二人が切戸口(能の始めに囃子方・謡い方が出て来る)から現れ、次いで橋掛かりを通って5名の女優が巫女をイメージさせる白と朱の衣裳で登場。語り手は場のタイトルと地文を語り、5人は持ち回りで役を演じるのだが、場ごとに表現形態が変わり、前半にあったラップ調だけはもっと符割りにヒップホップらしいセンスを欲しく思ったが、トボケた演出であるのに場を重ねるにつれ「劇的」が高まり、「リチャード三世」はオーラスを迎える。
この「遊び方」というのが不思議に真面目さ、誠実さを感じさせ、抄訳に近い作りでも戯曲が生きていた。
一目置かれた存在らしい理由が判った気が。