どん底 ―1947・東京― 公演情報 劇団民藝「どん底 ―1947・東京―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2021/04/09 (金) 14:00

    座席1階

    日本の新劇人は今も昔も「どん底」が大好きなのだという。最初は1910年の小山内薫、市川左団次だったというから、もう歴史の世界だ。極貧というのは演劇のテーマとして取り上げたくなるのだろう。パンフレットから学ばせてもらった。
    民藝による今作は、新型コロナで1年延期になった舞台だ。まずは、何はともあれ無事に上演に至ったのを喜びたい。
    設定は終戦から2年後の1947年、新橋の焼け跡。食べるものも着るものもなく、その日を生きるだけで精いっぱいの人たちのそれぞれの哀感、人生を描く。
    生きるだけで精一杯なのだが、どの人もエネルギッシュである。そうでなければ生きていけない時代だったのだ。末端の警官がやくざとつるんで小金を稼いでいるのだから、頼るものは自分しかいない。それでもこの、どん底の簡易宿にしがみついている人たちは、仲間意識のような空気も持ちながら、前に進んでいく。
    当時は当たり前だが、生と死は隣り合わせだ。この簡易宿でも、病気の住人が死んでいく。だが、死んでも弔う金が無い。つい2年前までやっていた戦争ではそれこそ街に死があふれていた。空襲で亡くなった人も、弔われることなくこの世を去って行った。その戦禍をせっかく生き延びても、尽きていく命はたくさんあったのだろう。食べ物も薬もないなかで、主人公の「正体不明の老人」が、重病の女性の身の上話を聞くシーンは印象に残った。

    最初に「新劇」はどん底が好きだと書いた。今回の舞台、若い人の姿も客席に見かけたがこの「どん底」。今の小劇場ブームを支える若い演劇人たちに取り組んでほしい演目だ。

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    2021/04/09 17:21

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