実演鑑賞
満足度★★★★
シアターXのシリーズ企画「一人芝居」にも一枚噛む女優志賀澤子のこれは又別のユニークな企画で基本コンサートであった。チェンバロ奏者としてあの著名な指揮者・秋山和慶氏の名前(別人かと最初思ったが同一人物のよう)を発見し、早速予約した。(終演の挨拶によれば二人が幼友達であり50年振りに会った事で実現した公演らしい。)
チェンバロは上下二段ある鍵盤の連弾、踊りはフラメンコでカントと呼ばれる歌とギターの伴奏、カルメンの2曲はチェンバロで踊った。演奏は女優による茨木のり子の詩と交互に奏され、時にシンクロし、詩は志賀女史が詩人に成り代わった語りのニュアンスで誦される。詩のタイトルと詩しか読んでいないのに、舞台を仕切る狂言回しにも見えた。
茨木のり子の詩は人や社会の来し方を見渡す目差しがあり、また己の今を見詰め、そこから踏み出すエネルギーとが渾然とある。前者が詩性を与えているから一定年齢以上の琴線に響かせ、自分も例外に非ず、涙した。僅か数行の言葉が持つ宇宙が音楽の持つ浸透力と見合ってこのパフォーマンスは成立したと思う。
チェンバロの鍵盤を我らが秋山氏はしばしばミスっていたが慌てる事もなく風景に収まり、こちらも志賀女史の知己というフラメンコ共々、悪くない取り合わせ。詩とそれを読む芝居の構成も良く、気持ちの良い時間であった。