実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2021/03/19 (金) 15:00
実在の事件を題材にした舞台だと、どうしてもその解釈に目が行きがちで、そこで事の是非を語ろうとする評価が多い。しかし、舞台化した時点でそもそもが創作なのだから、そこで何か見極めようというのは僭越な感がある。何かを裁こうとしての舞台ではあるまい。
貧困、ネグレクト、いじめ、家庭内暴力、孤独、等々事件をたどるには聞きなれたような言葉が並んでくる。現実の裁判では、少女は殺害されたといことだけれど、どうもしっくりこない。だったら、海に出たいと思ったかもしれないアヤカの気持ちは、どうやって昇華できるのか。山崎哲の創作への思いは、そこにあるような気がするのだけれど。
子供は常に不自由だ。生きる術を自ら手に入れることができない。
多くの登場人物をうまく整理して、時に躍らせてみせるまでにまとめ上げる演出は見事。
狭い田舎町での、周辺住民の猜疑心に話を落とし込むでもなく、とはいえ、殺人を犯す鈴香個人を断罪したり同情したりするでもなく、登場人物1人1人の言行のみによって、淡々と舞台を進めていく手順は、個々の場面で何を見せるかに執心しておりとても簡潔でわかりやすい。感情移入に走ることもなく、その場その場の登場人物の心情に寄り添える。
いわなは、海に帰らなかった「シャケ」の子孫。それは判ったけれど、「軍手」は?シャケを捕まえようとすると、手にケガをするから軍手を使えということかな。