実演鑑賞
満足度★★★★
第Q藝術は二度目。以前は客席少数でフラットな印象だったが、今回は割と競り上がった階段客席の、中央通路にも座席が追加され満席、見下ろすように眺めた。(75分という小品だから組めた客席だろうか。繰り言になるがコロナ以降の感覚、以前に戻る事はあるのだろうか・・。)
このスペースは狭いのだと開演後に気づく。中程度のホールでは標準だろう声の張りが序盤耳につき、ある場面で高温の張り上げ声が耳を刺したのはきつかった。殊更な「元気」は芝居の薄さを埋める手段(と言ってしまうには声量は演劇の常套、否演劇の機能ですらあるが)かと雑念が頭を巡った。
が、作劇家尾崎氏の豊かさ(を思わせるうまさ)を賞味する時間、俳優の演技と声量のモンダイを超えて訴えるものがあった。
象に魅せられた現代の女性活動家が、同様に象と所縁ある人生を送った父親(70年代)と祖父(40年代=戦争の時代)の逸話を紹介し、回想式に再現されるという芝居。象は一人の女性が舞いで表現し、ファンタジックな作り。しんみりしがちな話だからか溌剌と元気よく、が基調。悲劇性の強い戦時の動物園の動物たちの帰芻、現代の女性(語り手)の領分であるアフリカでの動物保護活動(死と隣り合わせの密猟者との戦い)を描きながら、中心は父親が取り組んだ百貨店屋上の子象の処置を巡る、一世と三世とを繋ぐハートフルなお話。
この二世の逸話にも依るが三世代に亘るこの物語をいつか前作並に書き込んだフルバージョンが観たい。(いやこれが全てですと言われるかも、だが。)