昭和虞美人草 公演情報 文学座「昭和虞美人草」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    大変面白かった。漱石「虞美人草」の人物を70年代に置き換えて、ロック雑誌を作る青年と周囲の女性たちの、世俗にまけずにいかに「真面目」を貫くかを描いた。漱石作品の換骨奪胎が実に見事。「虞美人草」を読んでからいったので、一層楽しめた。藤尾が小野に入れ込む心理も、原作以上に納得できた。
    「自分の中の第一義の部分で生きるのが大人」「世界を幸せにするのが本当の大人だ」「悲劇はなぜ人を真面目にするのか」「ここが真面目になるところだ」など、「虞美人草」のエッセンスがどこにあるかが、よくわかった。

    「アントニーとクレオパトラ」のNY公演の挿話も、ひねりが効いていて、藤尾の屈折をよく照らしていた。藤尾役の鹿野真央が、女王様然とした表面の奥の悔しさ寂しさをよく示して好演。糸子役の平体まひろは、同じマキノノゾミの「東京原子核クラブ」に続いて良かった。70年代を直接生きたわけではないが、フォークソング「結婚しようよ」は個人的に懐かしく、嬉しかった。
    クラシックな家具と、重厚な本たちに囲まれた書斎の美術が象徴するように、大変古典的ともいえるスマートで洒落た舞台であった。

    ネタバレBOX

    公演パンフに内田樹が書いている。漱石の書こうとしたのは、当時の青年たちに、どうやって成熟するか、大人になるかの道筋を示すことだと。「虞美人草」は「青年になる正しいやり方」を示した教育的小説なのだと。「虞美人草」というと、失敗作といわれ、藤尾という高慢な女性が一人目立って見える。その作品に、違う読みを示して秀逸。マキノノゾミの脚本もその観点から書かれている。

    原作では藤尾は破談にされた屈辱から憤死してしまうのだが、流石にそれは無理がある。今回の芝居では、結末が変えてあって、この方がずっと良かった。

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    2021/03/20 13:25

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