満足度★★★
江戸時代の盲人の悪の一代記を、津軽三味線風ギターと、渋い弾き語りで演じる井上ひさしの傑作。今回は現代の汚れたガレージ街(渋谷をイメージしたらし)をバックに、エレキギター(益田ドッシュ)、川平慈英のDJ風弾き語りに換えた。それはいいとして、戯曲にある社会批判が弱まった。藪原検校(市川猿之助)の最期が、権力が民衆を踊らせるための生贄という恐ろしいアイロニーでなく、ただの悪の破滅になってしまった。
なぜかというと、「朝日」で大笹吉雄氏も書いていたが、塙保己市(三宅健)の存在感が小さかったことが大きい。しかも、松平定信(みのすけ)に藪原検校の処刑を進言する塙保己市の肝心かなめのところをカットしている。また、死んだと思われていたのに何度も蘇って、藪原検校に執着するお市(松雪泰子)も出てきたかと思うと、すぐ消えてしまう。もっとたっぷり藪原を苦しめないと、女の執念と藪原の業の印象が弱まる。