満足度★★★★
久しぶりのMONO新作。舞台は十七世紀のタイ。アユタヤの日本人町である。当時山田長政などのリーダーのもと、南方へ進出していた日本人が、次第に追われる立場になっていたころ、アユタヤの商人兄弟を中心に、流れてきた武士、商人、労働者、現地妻などの人間模様である。この京都の劇団はかつて、ゲイの若者たちが共同生活するアパートの日常を描いた作品で、鮮烈な印象を残した。それからもう30年もたつという。確か男性だけの劇団であったがそのメンバーが今も残っていて、今回の舞台にも出ている。みな、結構おっさんになっていて、時日は残酷だなとも思う。しかし、このちょっと小味な劇団が、関西と東京で劇団のカラーのある上演を続けてきたのは、同じ京都のヨーロッパ企画と並んで、演劇界に快いアクセントをつけてくれたと思う。
今回の作品は、作者も書いているが、落ち着かない世相に足をとられてしまった。この作者で、この素材なら、もっと面白い設定や展開があるだろうが、極めておとなしい。細かさと言うならほんの一月前に秋元松代の「マニラ瑞穂記」を見ているので、どうしても比べてしまう。もちろん秋元とは別の線を狙っているのだが、うまく成功していない。もう東京での活動が多くなってしまった作者、俳優を擁する要するMONOだが、自分たちの年齢(初老の曲がり角)に見合った小劇場作品を考えてみたらどうだろうか