満足度★★★★
全64場とプログラムに書いてあって、そんなに次々場面が変わるのかと驚いた。でも見ていると、そうした目まぐるしさはあまり感じない。ノルウエーの外交官夫婦が仲介した、パレスチナ(PLO)とイスラエルの極秘の和平交渉を、瑣末な議論に深入りせず、あくまで芝居としてわかりやすくメリハリつけて見せたところが、最大の成果であろう。和平交渉という硬い題材ながら、知的な議論の正確さより、感情的なうねりを重視した芝居だった。
冒頭でPLOとイスラエルの両方からの電話を、夫婦がとって、仲介する場面から始めて、なぜこんなことになったのかと、さかのぼって事の発端から始める物語の構成にも、その工夫は見られる。しかし、何よりもの力は配役の妙にある。いちいち名前は上げないが、脇を固めるベテランたちの、役作りがすばらしい。老練な政治家たちの、虚々実々の駆け引きと、うちから滲む人間的な魅力と真情にひきこまれた。