地熱 公演情報 劇団民藝「地熱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    三好十郎の隠れた秀作を、老舗劇団が中堅・若手俳優陣を中心に、現代の観客に訴える笑えて泣ける感動的な舞台を作った。すばらしい。父親が死んで手放した田地を取り戻すという「夢」=カネを追い求めるあまり、人間の愛や情けを忘れてしまった留吉を神敏将が好演。留吉に思いを寄せる香代(飯野遠)も、抑えた心情がいじらしくたまらなかった。ふたりが結ばれる、素っ気無さの中に真情のこもるラストは(甘いとか、出来すぎという人がいたとしても)よかった。ひさびさに目頭が熱くなった。

    労働者の連帯ともろさ、単行の過酷な労働、金が人を卑しくしてしまう現実、農村の古い人間関係と金絡みの駆け引きのずるさ、大きなカネが小さなカネを飲み込んでいく資本主義の冷酷さ、いまならDVともいえる夫婦関係等々、社会の現実をたっぷり描き込んでいる。プロレタリア演劇の流れを汲むとともに、市井の人情もの的な喜怒哀楽もしっかり描いている。三好の戯曲はリアリズム演劇として水準が高い。

    実はこの芝居、男は実は女に動かされている、という「妹の力」が浮かび上がる形になっている。乱暴な山師の男を演じた齊藤尊史が、真に迫る演技で、影の功労者である。

    全5場あるが、最初2場と最後は九州の炭鉱町が舞台で香代が主役、3,4場は信州で留吉が主役という、分裂とも取れる異例の形式である。しかし全体を通して、人間の「美しさ」、再出発の希望がぐっと浮かび上がってくる。破格の作劇法も、この感動のためなら許されよう。荒れ地をイメージしつつ、舞台美術、要所要所で証明がドラマを助ける演出も、メリハリが付いて良かった。

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    2021/02/11 23:08

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