期待度♪♪♪♪♪
前作「無畏」も南京事件の主犯(として東京裁判で死刑判決を受け執行された)松井石根を通して大東亜戦争を検証した。次作もこちらが題材のようだが、現今の日本の惨状への焦りがこの本丸に挑ませているのでは?、と勝手な想像。(作家的にはじっくり後回ししたいテーマだろうに、とこれも勝手な想像。)
「無畏」では、中国の態度(欧米列強の横暴を許し日本の帝国主義化に不寛容)の変化を促す一手段としては「正しかった」と信じる主人公・松井が、記者(作者の創造?)からの問いに対して次第に(恐らく直視したくなかった)真実に向き合わざるを得なくなる、そういう場面を描いた(一対一のインタビュー場面はかなり長かったが全く感じさせなかった)。即ち、部下らによる子女殺戮や物資強奪を彼は「諫めた」ものの、これを問題化することは自らの統御の及ばなさ=統率力のなさを暴露することであり、事実を追認するしか彼の選択肢はない。部下が上司を見くびって既成事実を作るのも組織内部の権益や地位をめぐる闘争の一場面、天皇と軍の関係もそういったものではなかったか等と想像させる生々しさがあった。
もっともこの芝居はそうした「事実」の総体の中で、裁かれているのは南京市民への無秩序な殺戮であり、その事実に彼が辿り着き、どう対面するのかを描こうとしたもの。そして歴史の責任を問うことの困難さも。
思い出しながら、ちょっとばかり期待を高めている。