満足度★★★★★
死刑判決などを受けたBC級戦犯108人の生死という、重い課題を描き、心に迫る感動的舞台だった。まず、14人が死刑執行される場面での、絞首台の踏み板が落ちる、ドーン、ドーンという音に全身を揺さぶられ、冷や汗が出た。
「あ>、モンテンルパの夜は更けて」を歌って、助命嘆願に奔走した渡辺はま子(島田歌穂)、フィリピンの刑務所の過酷な状況を見て「日本人戦犯たちを導く、いたわるというより、自分が同じ苦難に飛び込まなければ」と、刑務所で同じ食事をしながら、死刑囚たちの恩赦をローマ法王に嘆願書を送り続けた教誨僧の加賀尾(大和田獏)の努力、願いが描かれていく。ついには、はま子のモ刑務所慰問が実現するところは、歌もしっかり聞かせて、よかった。
そして、加賀野のキリノ大統領(真山章志)への面会が実現する。この場面が圧巻。真山さんの大統領の威厳と人間性を体した演技に圧倒された。
キリノ大統領に渡したオルゴールから、「あ>…」のメロディーが流れ出しただけで、涙が込み上げた。108人の命を握るキリノ大統領の、罪の償いの必要と、復讐の連鎖を止めたい思いに引き裂かれる心。戦争中に妻と子供3人を殺した日本軍の残虐行為への抑えがたい恨みを吐き出す。
大変見ごたえのある舞台だった。