満足度★★★★
2004年黒テント公演で作者名と作品概要のみ知ってより(公演は観ていない)一度も機会を得ず、ようやく観れた。彩の国さいたま芸術劇場の稽古場公演には二度来てホールは初めて。緩やかな傾斜の中劇場(芸劇イーストを少し横に広げた位だろうか)。
ネクストシアターらしい若者の演劇であった(発声といい演技といい)。台本を持ちながらも皆活発に動き、若いだけに台詞も入るのだろう、台本を見る瞬間は殆どない。という事で中々臨場感のあるリーディング(と呼ぶのさえ違和感)を堪能した。
ある稽古場に「作者を探す者たち」が登場する。安部公房「友達」に似た不条理劇のテイスト(ある男の部屋に家族連れがやって来て為し崩しに占拠してしまう)。別役実「あの子はだあれ、だれでしょね」も見知らぬ一人の女が家族に入り込み一人ずつ殺して行く恐ろしげな話であったが、本作も「占領」はしないが不穏な空気がある。自らを「登場人物」と言って憚らない家族によって、「作りもの」である演劇製作が「本物」(登場人物そのもの)である彼らの存在が醸す説得力や話のリアリティに飲まれて行く。メタ・シアターの構造、演劇批評、この奇想天外な戯曲が1921年に書かれていたとは...。
演じ分けという点では、若手の演技の幅のせいか人物の関係が分かりにくい部分があったが、稽古の制約や戯曲のハードルを思えば健闘かも知れない。小川絵梨子演出とは今回限りだろうか(是非とも縁を大事に)。