満足度★★★★
トルストイの『イワンのばか』を基にしつつ、こんにゃく座らしい仕掛けのある新作オペラ。
軍人のセミョーン、たいこ腹のタラス、イワン、口のきけない妹マラーニャの4人の兄妹、そして大悪魔と三匹の小悪魔の話だ。
このオペラでは、トルストイが農民学校で自作の『イワンのばか』を生徒らとともに読み進めていく形で物語が進む。生徒たちが入れ替わり立ち替わり物語の登場人物を演じたりもする、入子構造の物語がいかにもこんにゃく座らしい。
後半は、同じトルストイの『イワン・イリイチの死』の主人公が登場し、トルストイを取り締まろうとしたりもする。
大悪魔を演じる大石さんがイワン・イリイチを演じる。神の名を聞いて消える悪魔が残した穴と、病床で死を迎える人間の葛藤が重なる。
トルストイと、2人のイワン。ここにしかない物語。ここにしかないオペラ。
生演奏と人々の歌声の余韻に包まれて会場をあとにした。