満足度★★★★
何が良かったといって、ベートーヴェンのピアノ曲と交響曲の触りを、ベートーヴェンの人生とともにたっぷり堪能できたのが良かった。稲垣吾郎はわがままで起こりっぽいベートーベンを、抑え気味にクールに演じていた。そのクールさはナテッネ(村川絵梨)とマリア(剛力彩芽)の姉妹に求愛するところで強く感じた。意外とそっけないのです。女性に対する不器用さを表現していると思った。女優二人が、華やかさと芯の強さを兼ね備えた演技で素晴らしかった。稲垣吾郎のベートーヴェンとのトライアングルがこの舞台の肝であった。
ベートーヴェンの父親に対する恨み・トラウマが、回想シーンや、現在の幻影として度々出てきて、楽聖の人物に深みを与えていた。また、ウィーンの警官のフリッツ(深水元基)が、ずぼらな遊人から、強権的な秘密警察へと豹変することで、自由が狭められていく時代の動き、革命の理想の幻滅を示していた。
休憩20分込み3時間10分(70分ー20分ー100分)。市松模様の排斥で、間隔をあけていた。既に満席にしている劇場も(新国立や東急、東宝系など)多くなっている中、慎重な劇場の姿勢だった。