満足度★★★★★
KARAS in teatreX 3度目だが期待に違わずハイレベルのパフォーマンス。照明、音、踊りそれぞれが舞台上で拮抗している。『去年マリエンバードで』も大昔観ていて最近また懐かしく見直した映画だが1960~70年代に斬新だった映画は今も古くなく蠱惑的。舞台は映画のエッセンスが注入され、私は(「青い目の男」「ゴドー」と同じく)台詞をバックに踊、るのを想像していたがオルガンで攻めてきた(恐らく映画のでなく似せたもの)。闇と光を往き来する間に憂いと熱情が舞台に充満していく。確信と不安の狭間に据え置かれる。
映画では回廊のような白亜の邸(城?)で男女が社交界を演じる中で、ある男が女性(亭主持ち)に言い寄っている。「去年、確かマリエンバードだったか、、あなたは確かに私に言った、1年後にもし会えたらその時は、と。。」女性はけだるそうに「忘れたわ」とだけ答える。
画面が捕らえた人々は無表情、静止が多くカメラも彼らを風景のように舐めながらゆっくりとパンして行く。アテレコのニュアンスのせいか人物らは人形にも見える。男は最後に女性をある場所で待つと告げ、やがてそこに女性は現れ、二人は手を携えて広い庭園をゆっくりと歩いて行くが、カメラは相変わらず感情移入する事なく風景を映している。閉じた人形の世界と決別するエンディングに、旧態依然の体制との訣別というテーマも閃くが、不安は色濃く、単純なハッピーエンディングとも見えなかった。
それに対して舞台では最後に漸く人間同士が相まみえ、照明が落ちる。すれ違いの末の対面は今人間が飢えているものを再び取り戻した未来の図と見え、この舞台の判りやすく心温まるラストになっていた。
シアターXの側面の壁の凹凸まで利用した照明、刺激的な音響(音楽)に加え、今回は舞台各所がせりのように照明と連動して上下し、場面が大きく変化する。アイデア満載な演出だが、大きめの舞台は今回3回目、毎回新しさを感じる。攻めている。