満足度★★★★
瀬戸山美咲作「道成寺」の選良意識が鼻につく父、母、医大生の息子。こんな人いないだろうというほど戯画化された描き方だが、自分の奢り(と裏腹のコンプレックス)が彼らの中に仄見える。痛い舞台だった。長田育恵作「隅田川」は、窃盗犯の鑑別所の少女が陥った不幸が、予想外の真相で、言葉を失う。男を責めてはいないように思ったが、後から考えると、「本当の名前を教えて」と頼んだ少女に、男は「あとで」とはぐらかした。ここに男の狡さ、無責任が凝縮されている。女は性暴力の被害者と取ることもできる。男にとっては怖い舞台だった。
どちらも老女役の鷲尾真知子の哀れさと凄みに大きく振れる演技が圧巻だった。「道成寺」の夫婦を演じた高橋和也の可哀想な程の勘違いの道化ぶり、明星真由美の秘めた夫への恨みと子の溺愛が痛々しかった。