満足度★★★★
鑑賞日2020/12/03 (木) 13:00
座席1階
大逆事件を紀伊半島・熊野から描いた物語。メメントCの代表的な演目で、再び「開店」となった。熊野の医師・大石誠之助が貧富や身分の区別なく食卓を囲むレストランを開いたところから物語は始まる。
政府による言論統制が強まろうとしている時期、熊野という「地方」でも日露戦争を戦う日本国民の戦時高揚ムードが高まり、平和を愛する人たちへの言論的な圧力が強まる。太平洋食堂は言論の自由空間でもあった。劇中、「大日本帝国、万歳」ではなく「大日本帝国、アブナ~イ」という場面では拍手も起きたが、それは現代日本政府の巧妙な言論弾圧(日本学術会議で特定のメンバーが就任を拒否されたこと)に通じるからにほかならない。
休憩を挟んで3時間30分近くの長丁場だが、青年劇場や青年座、民藝、文学座などから実力俳優を迎えて総力戦という舞台に、ひきつけられた。藤井ごうの演出も切れがあってよかった。
最終盤、大逆事件裁判の論告や最終弁論が出てくるが、これは今回の改訂で盛り込まれたということだ。これがあることで、太平洋食堂の存在がより明確になるし、いかにこの裁判が政府の一方的な断罪であったか、当時既に大きくゆがんでいた日本の司法を浮き彫りにするというバージョンアップがなされている。