ハルシオン・デイズ2020 公演情報 サードステージ「ハルシオン・デイズ2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鴻上尚史の舞台はどこか破茶滅茶なものだが、今回は作品内部の矛盾が解決しきらないまま、支離滅裂寸前にまで至った。自殺志望の3人がネットで知り合って集まる。自殺のために。しかし、その一人は、かつて教え子の高校生を自殺させてしまった元スクールカウンセラー(南沢奈央)。彼女にしか見えないその生徒の幻(須藤蓮)が常に傍にいる。彼女は自殺を止めようと来たのだが…これがホップ。

    しかし、自殺志願者のリーダー(柿澤勇人)は人格分裂気味。発作が起きて、「自粛警察と戦い隊」を立ち上げ、自殺グループは「戦い隊」に変えられちゃう。その隊が取り組むのは、「泣いた赤鬼」の芝居。これを近くの保育園で慰問公演したら、自粛警察がやってきて公演をぶち壊し、そのことで彼らの横暴ぶりを世にアピールできるというのだが。ナントも回りくどい設定である。舞台でやるのは「泣いた赤鬼」のリハーサル。名作だとは思うが、お遊戯に付き合わされるのはちとしんどい。ここでステップ。

    自粛警察のような同調圧力への鬱憤を爆発させようとしたのだが、最後は大江健三郎のような尻すぼみ。正気に戻ったというのでは、一種の夢オチで、カタルシスに至らなかった。演者と客席で「自粛警察と戦い隊」の歌は歌ったけれど、自殺志願隊と戦い隊の分裂が結局最後まで統一できなかった。

    舞台美術は通販の箱を積み上げた壁。場が進むにつれ、増殖し、最後は壁面全てをお覆い尽くす。ここにコロナの巣篭もりの暗喩があるが、「だからナンなの?」という気もする。ハルシオンは、睡眠薬の名前らしい。自殺したい不眠症者の象徴である。でもハルシオン・デイズとは、平穏な日々という意味らしい。

    ネタバレBOX

    しかし、保育園が慰問隊がコロナ感染経験者と聞いて、慰問を断ってくる。マサ(柿澤)は、急遽作戦変更、爆弾を徹夜で作り、稽古中に爆発させて、自粛警察の仕業に見せかけて、彼らを陥れようとする…。でジャンプ

    でも爆弾は不発で、マサも正気を取り戻して、自殺志望者に戻る。けど、みんな自殺は取りやめ。もう一人のハンドネーム「ユンセリがライバル」さん(石井一孝)が、饒舌な道化役で、舞台を盛り上げる。サラ金・闇金に追われて死のうとしていた彼も、修羅場を生きようと翻意。南沢も死んだ生徒に心から詫びて、心の支えが取れ、幻は消える。生徒の話す月の地球照話は知らなかった。面白かった。

    マサも、コロナ感染して会社から追い出されたのは親友で、抗議して戦う親友を、自分はネットで中傷した「最低なやつです」と告白。3人の事情が最後は明らかになる。

    客席は市松模様。慎重な対応で、驚いた。座れない席には紀伊国屋のダンボール箱をおき、「この席の方はとなりへ」という張り紙もちらほら見えた。どういうチケット販売をしたのだろうか。

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    2020/11/21 22:27

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