満足度★★★★
鑑賞日2020/11/17 (火) 19:00
座席1階
二つの直訴状というアイテムを時代を超えてつなげた。先の戦争での旧日本軍幹部、そして現在、財務省幹部の指示による公文書改竄。指導者への忖度、仕事への誇りを捻じ曲げられ犠牲になる現場。坂手洋二はこの国の組織の体質は何も変わっていないと明示する。
二つの時代が交互に進化するが、わかりやすい構成だ。歴史と時間を追って、役者たちは二つの役割を演じていく。燐光群には欠かせない円城寺あやのかすれ声が気になった。大丈夫かなと思ってしまう。
戦前と戦後で日本人の本質は何も変わっていないとよく言われ、特に今は新たな戦前ではないかと言われても久しい。だからこの舞台の訴えるところに新味はない。それでも坂手は作り続けなければならないのだろう。そして、自分たち観客もそれを確認し続けなければならないのだろう。世の中、変わらないからもういいよ、と言った瞬間から、戦前の再来は現実になる。