物語のあるところ 公演情報 SPIRAL MOON「物語のあるところ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    朗読劇-短編3本で、自分はB1「家族の風景」C1「氷の解けた水」D1「砂漠の夜に」を観た。劇団「SPIRAL MOON」ではストレートプレイしか観ていないが、本作はそれぞれの持ち味が異なり、その異色感が面白く、朗読劇の魅力を再認識した。同時に劇団の新しい一面(魅力)を見ることが出来た。
    3編の共通としては朗読劇「本」に拘り、その魅力に迫ろうとした印象。ちなみに読書は自分の中で想像し情景や状況、そして心情を想像しながら読むが、朗読劇はそこに役者の感情表現が介在し、本の中身がより具象化したものになる。上演時間は70分であることから、それぞれの登場人物は2~3人で、濃密な会話を展開する。そのためには1人ひとりの個性や立場を際立たせる必要があるが、すべての作品において成り立っていた。
    (上演時間1時間10分)

    ネタバレBOX

    舞台と客席を一定の距離をあけ、ジューゼット、オーガンジーでの舞台幕で仕切り新型コロナ感染症対策。下手側舞台外のコーナーテーブルに岩波文庫等の書籍と鳥籠が置かれ、朗読という雰囲気作りをしている。朗読劇らしく?演者のちょっとしたしぐさや座る配置、また天井からは鳥籠が…その空間的演出が観客の想像力を補う。

    B1「家族の風景」
    父、母、娘(高校生)の夕食時の語らい(「ト書き」も含め)。突然に切り出される両親の離婚話を中心に、その出した結論に対し娘の意見を求める親。一方、大学受験を控え本音では離婚してほしくない娘は、両親の問題と取り合わず のらりくらり。そして離婚=別れることではないという奇妙な理屈を喋りだし会話が漂流し結論らしいものがないまま…。「離婚」というインパクトある話が出されても、何となくいつもの家族風景に空恐ろしさを感じる。

    C1「氷が解けた水」
    水はいろいろ変化する。例えば冷たくなり温かくなり、固体になり流体になる形状が、観客の感性を問うような。
    会社の先輩(年下の女)と後輩(年上の中年男)の宇宙的(=アストラル)で不思議(=ミステリー)な雰囲気が漂う物語。別の地球(=第三者立場)から俯瞰する、そんな安心感覚であるはずが、なぜか落ち着かない不安な気持にもさせる異端(=アブノーマル)な作品だ。

    D1「砂漠の夜に」
    オーソドックスな寓話的作品。王子とその側近の逃避行、その過程における立場をわきまえた友情(信頼関係)が語られる。権力という座の孤独、何もかも疑り深くなる、そんな不信感を払拭し温かい気持にさせる。

    この3編の上演順、それが観客の印象に残るような構成で実に巧みだ。家族の日常、それも団欒時に不快(深い)話を持ち込む第1話。それに続く夢想と現実が錯綜したような不思議感覚の第2話で妙味を引き出し、最後に分かり易くオチのある第3話で締めくくる。見事な構成、演出だった。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/11/15 17:11

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