満足度★★★★★
鑑賞日2020/11/13 (金) 14:00
天気予報は軍事機密だったと聞く。ノルマンディー上陸作戦が天候を考慮し予定より一日遅れたというのは歴史で学んだが、背景にこのようなドラマがあったとは知らなかった。いつもは3時間というと長いという感想が多いのだが、今回の舞台はそんな長時間座る苦痛など感じない、舞台に引き込まれた3時間だった。
米英の気象学者が正反対の予報を出した。自分も英国には行ったことがあるので分かるが、とにかくこの国の天気は変わりやすい。地元の人と話すとお天気の話題から始まるというお国柄だ。そういう意味では、この変わりやすい天気を熟知している英国の気象学者の方に分があったと言える。
だが、ことは軍事作戦だ。天気だけでなく、月夜であるかどうか、敵が極秘作戦に気付いていないかなどさまざまな要因が作戦遂行を決める要素になる。舞台では、加藤健一演じる英国の気象学者が「(司令官の)アイクはもう結論を決めている」と嘆く場面が出てくるが、最終的には天候の安定が史上最大の作戦に決定的に影響することになる。
原作がそうだったのだと思うが、いつもピーカンのカリフォルニアやフロリダの天候だからと米国の気象学者を小ばかにするようなくだりがあったのはおもしろかった。このあたりは大ざっぱなアメリカ人と緻密(かどうかは分からないが)な欧州との連合軍がうまくかみ合ったから作戦が成功したのだろう。
加藤健一と共演を重ねる加藤忍が今回、軍人なのに妖艶な雰囲気をうまく出していてとてもよかった。
カトケン事務所得意の抱腹絶倒劇ではなかったのは、新型コロナウイルスの感染防止対策だったのだと思う。笑わせる要素はそこかしこにあるが、くすりという笑いであり、そういう意味ではとても配慮された演目のチョイスだったのではないか。また、幕間の15分、非常階段のドアを開け放って換気していたし、座席の間隔も開いていた。加藤健一事務所の今年の公演は結局、これ1本しかできなかったという。そういう意味でこの座組の意気込みというか、何としても無事に終わらせ、かつ、客席を楽しませるのだという空気を感じた。
(本多劇場の非常階段を初めて見た)