プレッシャー 公演情報 加藤健一事務所「プレッシャー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    第二次大戦終盤の天王山・Dデイの戦争秘話である。もっともこの話は映画でもエピソードとしてよく描かれるし、19年にはトランプ訪英の際に女王と並んで抜粋を見た、という事なので(英文ウイキペディア)、英米ではだれもがよく知っている日本で言えば、日本海海戦の大転回作戦のような話なのだろう。要するにノルマンディの反攻上陸作戦を成功させるためには当日の天候が重要で、英米の気象将校がそれぞれの論拠から自説を立てて譲らない。
    この頃の天気予報はよく当たるし解らないときは許容範囲も正直に言うが、ついこの間までは結論は出すがあまり当たらなかった。だからその成否がドラマにもなるわけだが、この作品、戯曲としてはあまり出来がよくない。英米将校の対立も論拠が専門的なので、丁寧にやってはいるが、それがかえって。退屈になったりする。実話なのであまり作りすぎるのもはばかられるのか、英米将校の対立も人間味が乏しい。そこは作者も承知らしく、英将校には妻の難産、アイゼンハワーには戦場妻のような秘書、などの挿話を用意しているが、それも何かおざなりだ。客は戦争の行方を知っているから舞台に予想が当たる当たらないのサスペンスや緊張感がない。やはりこれは、今もいつも天候不順に振り回される風土に生きるイギリスならではの芝居だろう。休憩15分を入れて3時間は長い。
    こういう実話を素材に、選べばこういう芝居になるだろうが、折角実名で出てくるアイゼンハワーなどは、オモテだって将たる柄が欲しいし、取り巻きがファミリーと言うなら、そういうところをもっと丁寧にやれば、難産の妻を抱えて孤軍奮闘の英将校との家族モノの英米ドラマにもなったかと思う。
    カトケン事務所は今年はこれ一本で寂しい限りと本人がアンコールで語っていたが、ここでしか見られない欧米のちょっとしたエンタテイメント小芝居はいままでもいくつかあった。来年のノーマルな舞台環境で楽しい芝居を見せてくれることを期待している。

    0

    2020/11/11 23:59

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大