手紙 公演情報 劇団キンダースペース「手紙」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2020/11/06 (金) 15:00

    コロナ禍以降、古典劇を観たいと思い続けてきた。コロナ禍の現状を反映した新作や、福島禍と結びつけるような作品、うんざりだ。もう十分に疲れた、まだ疲れさせるつもりかと。

    モームの作品、十分だ。「手紙」、イプセンほど堂には入っていないが、人間の愚かさを諦観するよい作品だと思う。

    人の愚かさを描こうとするときに、共感や同情は無用だ。どうしても、情緒に流れてしまいがちになるし、悲観や哀感は下げすみを伴う。ただただ、冷徹であること。

    主人公レズリーの行動に、弁解の余地はないだろう。パンフレットにて原田一樹氏が、恋愛の幻想性に触れている。が、それを説いたうえでも、その幻想性は、理性に対する感情の詐
    術でしかなく、その詐術に意識無意識にかかわりなく乗っかってしまうことに、人間の愚かさを観ることになる。

    ネタバレBOX

    この舞台の面白さは、レズリーが犯した罪(夫への裏切り、愛人の殺害)そのものは、手紙の存在なくしても、断罪されてしかるべきであるのに、手紙の存在が彼女の罪を増幅したことにある。ロバートの未来の喪失、ハワードの背任行為、そして物語後に生じたであろう数々の軋轢、レズリーに訪れるであろう厳しい孤独。

     今回の作品を観る限り、どうも強さが足りないと思う。そもそも手紙が出てきたのって、家に手紙が置きっぱなしになっていた(あるいは、愛人が妻に念のために託しておいた、といって売っちゃうんだものなあ。でもその方が大きな復讐と考えられなくもない。)
     周囲の人物たちが、もっと注意深く現場状況を探り、2人お関係を追っていれば、かようなまでの悲劇は起きなかったのではないか。甘い憶測と偏った判断が、ロバートやハワード、そして一層(自業自得とはいえ)レズリーから何を奪ったのか。
     愚かさの連鎖は、冷淡なまでに被害を拡大させるのだということを、もっとラストに向けて強度をもって描いて欲しかった気がする。これでは、レズリーの懺悔録でしかない。

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    2020/11/07 12:23

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