かすがいのカニ缶 X 夕映えの職分 公演情報 りゃんめんにゅーろん「かすがいのカニ缶 X 夕映えの職分」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    無観客の完全配信限定の、一人芝居二本立て公演。
    一本目は、たねちゃん主演の「かすがいのカニ缶」
    二本目は、南出さん主演の「夕映えの職分」
    想像していたよりも映像綺麗で音声もクリアで高品質な映像でした。

    二作品の一人芝居、現実社会を生きてる人の生活が飾り気なしに描かれていて、人間味がありました。
    現実社会で生きていくのは、ほんと楽じゃない。
    台本で仕掛けるという配信をどう観るかの実験もあり、面白い公演でもありました。

    ネタバレBOX

    「かすがいのカニ缶」

    場所は、「かすがい」というカニ缶を製造販売している会社の社内。
    「かすがい」にクレームを言いにきてる女性。
    曰く、カニ缶一年分プレゼントに当選したものの、一年分が僅か4缶とは納得がいかない、365缶寄越せというクレーム。
    台詞を発するのは女性ただ一人、だけれども会話相手である「かすがい」社員の男女の声も聞こえてくるかのような巧みさ。
    女性の前にいる男女の想定立ち位置を2点のカメラアングルで導くことにより、より臨場感が増す仕掛け、配信ならでは。

    いや、わたしも、一年分なら365缶やろ~?と思いました。
    成人の平均摂取量に沿っていると説明されたとて、それは屁理屈やんって思う。
    世によく見受けられるプレゼント一年分、その一年分の概念とは?と前々から思ってた。
    小さく表記するんやなくて、一年分(4缶)って大きく表記するべき。
    という個人的主観による余談。

    押し問答が続く中、女性のカニ缶にこだわるのは亡き夫がカニ缶好きだったからなのだという告白により、解決する。
    そこまでカニ缶を好きでいてくださる方なら…と、見事女性はカニ缶365缶ゲット。
    顧客を大切にする心ある良き企業の在り方やなと、ここ素直に感心しました。
    当然そんな重量の缶詰を自力で持ち帰ることなど不可能で、「かすがい」社員の男性に自宅まで運んでもらう。

    自宅にて、男性の人柄の良さにツンケンしていた女性もすっかり打ち解けて、本当は夫は亡くなっておらず家出をしたのだと告白する。
    女性にとってのカニ缶とは、まさにかすがい、自分もカニ缶を好きになればカニ缶が異常に好きである夫との距離が埋まるのではないかと、夫と自分との間の鎹。
    負けん気の強い女性の思いがけない弱気な姿が垣間見える。

    そこにやってくる「かすがい」社員の女性。
    この女性も大層気が強く、よくいがちな経験浅く自分では何も解決できないのにやたら自尊心だけは強くて事を荒立てて回るタイプ。
    ここで衝撃の暴露、この女性社員は家出した夫の不倫相手だった。
    そして家出した後も女性社員とは連絡を取り合っており、今からここに帰ってくると。
    薄々は感づいていたであろう夫の不倫に直面するという場面で、自身は目の前の男性社員と何やら恋に発展しそうな雰囲気。
    ここでかねてより用意してあった離婚届を取り出す女性、不倫相手の女性社員、いい雰囲気な男性社員、ふたりに離婚届承認欄にサインをもらう。
    思いがけず離婚届には承認のサインが二人分要るという豆知識を得ました、知らなかったわ、面倒ね。
    何はともあれ、これでみんな綺麗さっぱりそれぞれに明るい人生を…で終わったのが配信。

    配信を観終わってから、特典の台本を読みました。
    各登場人物の年齢設定やら、ト書きやら、行間を埋める情報満載でもあり。
    また台本には、台詞として発せられていた女性の台詞だけではなく、会話相手である男性社員、女性社員の台詞も全部書かれていたのが驚きでした。
    台詞も巧み、たねちゃんも巧みだったので、何ら違和感なく、ほぼほぼ想定通りの言葉を言ってましたが。
    最後の最後、配信観てる分にはまるで男性社員が女性を口説いているようにしか観えなかった部分が。
    なんと、男性社員は女性への好意を語っていたのではなく、カニ缶への愛をひたすらに説いていたという、これ以上ない衝撃の事実、衝撃の仕掛け。
    台本配布が配信終了後だったわけを深く理解でした。
    南出さん…さすがだわ、なんて一筋縄ではいかない。
    完全無観客配信という状況をこんな風に活かすなんて。
    改めて感服です。

    そして作中あれだけカニ缶、カニ缶言われたら、当然カニ缶食べたくなるのが人情ってものですが。
    ちょっと気安くは手を出せないのが、缶詰の王者カニ缶。
    仕方がないので、カニカマで手を打っておきました。

    「夕映えの職分」

    こちらは主宰であり、作演である南出さん主演。
    すごい台詞量、しかも上演時間も長め、自分で自分を苦しめるストイックな作品。
    台本手放さないリーディンク形式なのは、もう仕方ないと思うのです。

    舞台は小学校の職員室、時間は放課後夕暮れ時。
    昨日開催された運動会のDVD編集の為に居残っている場面で、教頭先生と電話で会話してるところから始まる。

    会話の端々から、この先生の人柄がしのばれる。
    他人の気持ちの機微に疎い、自分の価値観を絶対だと信じ他人の価値観を受け入れることができない、弱きものには強く出て長きものに巻かれる気質、不遜で他人を見下しがち。

    ここだけ取ると、なんて最低な人間なんだという印象を受ける。
    だけれども、この先生も最初からそうだったわけじゃない。
    民間出身の先生、会社を辞めて教職に就くにあたって、挫折を経験。
    勤めていた会社で自分の正義を通そうとして、潰されて辞めてきた。
    その経験から、正しいことがいつでも通るわけではない現実に絶望して変わった、変わらざるを得なかった。

    そうしてやって来たこの学校で、かつての自分のような同僚に出会う。
    頑ななまでに自分の信念を真っ直ぐ貫く同僚に、かつての自身を重ねる。
    きっと苛立ちを覚えたのだろう、衝突して追い込んで、辞めさせるに至る。
    この同僚は猪突猛進、自分が正しいと思ったことを押し通す気質。
    教頭先生によると昨日の運動会にも乗り込んできていたらしい。
    自身の信念を通す為に、すでに辞職している学校の運動会に口出しをしに。
    さらには先生が居残っている職員室にまで乗り込んでこようとする、幾度もインターホンを鳴らす。

    信念が間違ってなければ、正しいこと言っていれば、全ての行いが許されるのだろうのか、何をしてもいいのだろうか、それはある意味人間味がなく機械的とは言えないだろうか、正義のごり押しではないだろうか。

    そんな中、職員室に警察から電話が入る、この学校の生徒が集団で万引きをしたと。
    しかもその中に、先生の担任するクラスの生徒も混じっていると。
    この生徒は、先生が贔屓にしている生徒、特別お気に入りの生徒。
    会話の中の言葉から察するに、この贔屓されてた生徒は、贔屓されてたことにより不良グループから目をつけられており、苦しんでいた。
    そしてその兆候に気が付いていたにも関わらず、先生は放置した。
    彼が先生への反発で自ら行動したにしても、不良達に強制されたにしても、兆候は確かにあったのだ。

    万引き問題が勃発する中、さらに家出中の妻からLINEが入る、離婚を考えていると。
    生徒達の問題にも、妻との問題にも、この先生は何一つ気が付いてなかったと言う、何も問題はなかったと、上手くいっていたと、何の兆候もなく突然だったと。

    本当に気が付いてなかったとしたら、あまりに他人の心の機微に疎すぎる、人が視えてなさすぎる。
    本当に視えてなかったのかな…いや心のどこかでは分かっていたんじゃないかな、分かっていながら否定していたんじゃないかな。

    挫折から再び立ち上がって自分では達観したと思っている理念によって進んできた今の道で、またこうして挫折に直面し。
    最後、ようやくかつての自分のようだと感じている元同僚と向き合う。
    彼はこの後、今度はどのような生き方を選ぶことになるのだろう。
    救いだったのは、会話から察するに、どうやら教頭先生はまともな考え方をもった人らしいということだろうか。

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    2020/11/03 15:18

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  • ご覧いただけてよかったです。
    ありがとうございました。

    2020/11/07 08:50

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