満足度★★★★★
過去の自作上演と今回の題名から「軽めのちょっと気の利いたやつ」を予想していたがガッツリ2時間半弱の本格芝居。それは冒頭で物語導入の一文を喋る女優の「さあ今始まります!」の声に表れる(新宿梁山泊の開演宣言のテンションと言えば分かりやすいか)。
「楽屋」フェス参加に始まった(と記憶する)さんらんは主催が好むらしい安部公房作品を中心に、時に自作を上演、だがこのところ自作が続き、今回のパンフにも自分の書いたものを上演していくのが良いという気がしている、と述べており、全く賛同(全部見れてないので無責任な事は言えないが)。今回の作品で<さんらん>が地歩を築いたとは正直な感想だ。
ストーリーに踏み込むと大変なので割愛するが、俳優の適材適所、次第に見えてくる人物像、思い出すと愛おしい人物たちが今も瞼に・・。適材適所と言えばVUoYの地下空間が「掘る」テーマにふさわしい。この質感に、演出はさらに舞踊を当てて、芝居のスケールを広げた。冒頭と終盤に同じ群舞があり、途中にソロがある。謎かけのような冒頭の群舞(掘る動作の変奏に見える)が、後に踊られた時、涙が出た。夢破れても人は生きる。筋肉を使い、動き、日々の営みをするために・・。「夢」は破れたか否か、僅かな光を残して芝居が終わるのはご愛敬。人物達それぞれの人生の物語がこれほど雑味なく我が身に浸みてくるとは・・「うまい」の一言。