余命バイバイ 公演情報 office Knight 「余命バイバイ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    今年で36歳になる演劇人の方が集結した公演とのこと。
    親しくさせて頂いている人が出演されていたので観に行ってきました。

    ネタバレBOX

    もう若年層でもなく、かといってまだ中年層でもない、狭間の世代。
    この世代ならではの、安定した生活に収まっている者、まだ夢を叶える途中の者、対比。
    夢を追う者は、安定し充実した生活を送る者を前にし、同じ歳でありながらまだ何もなしえてない焦りを募らせる。
    このままでいいのか、そろそろ諦めて自分の安定の道を進むべきではないのか。
    その焦りが、妖しい者からの誘いに乗らせてしまう。

    夢追い人の前に現れた妖しい者は言う、自分は余命を買い取り、買い取った分だけ過去に行かせることができると、過去に戻り人生のやり直しをさせることができると。
    過去に戻ってずっとそこにいられるわけではない、過去に戻って失敗や過ちをやり直したら、また今に戻ってこないといけない。
    過去から戻った今は、やり直した行動の結果によって変化が生じた世界。
    但し、やり直した結果だけが残り、その過程を知ることできない。
    つまり過去に戻った結果、本来は友人と結婚するはずだった女友達が自分の妻になっていたけれど、どのように結ばれ育んだかの過程は記憶に書き込まれることはない。
    つまり過去に戻った結果、漫画家デビューすることができたけれども、デビュー作がどのように評価され、次回作がどのように創作されたかは記憶に書き込まれない。

    この他にも色々と…設定が、まぁまぁ細かい。
    こういうお話の流れにしたい、こういうお話の流れにするにはこういう設定が必要等々、練り練りに練り込まれたのだろうなという印象。

    夢追い人は漫画家を目指しているわけですが、諦めてちゃんと就職しようかなぁと打ち明ける彼に対してかける友人達の、そんなこと言うなよ、おまえならやれるよ、諦めんなよ、頑張れよって言葉が、一見味方になって励ましてるように見えて、親身になっておらず物凄く無責任で軽薄だなぁと。
    飲みの席での愚痴でもあり、自分達は充足しているということもあり、まぁそんなものかもしれませんが…そこでいささか友人関係の希薄さを感じてしまいました。

    編集部に原稿を持ち込むも、編集さんにちっとも読んで貰えず未読のまま捨てられる日々、とにもかくも読んでもらいたい、読んでもらいさえすればきっと・・・という望みを持ったことが、そもそも余命を売り始めることになったきっかけ。
    今の自分が書いた原稿を、編集部に持ち込んだ前日に戻り取り返し、その原稿を手にさらにもっと過去、まだ編集さんが自分の原稿に目を通していた頃に戻って読んでもらう。
    その結果として、思惑通りに編集さんは今の自分が書いた原稿を評価してくれ、漫画家デビューを果たすわけですが・・・。
    果たしてそんなに箸にも棒にもかからない扱いを受けてた人の原稿が、僅か数年、特に何ら変化のない数年の時を経ただけで、漫画家デビューできるほどの出来栄えになるものだろうか・・・いやそんなわけない、と思ってしまいましたので。
    ここに説得力をもたせて欲しかったかな。

    余命は売ることもできれば、買うこともできる(という設定)。
    売るときの対価は過去戻りというファンタジー性のあるものだけれども、買うときの対価はお金っていうあたりが生々しくて、ん??ってなった。

    余命売買で余命を買っても、病気は治らないし、結果余命は延びない。
    そんなわけで作中では癌で余命いくばくもない友人が余命売買で余命を買ったのに死んでしまう。
    じゃあ余命の定義とは・・・?ちょっと謎。
    病気だろうが事故だろうが、予めその人に運命的が決まっているのなら、余命は余命なんじゃあ・・・?

    彼女が守りたかった大切な想い人というのは、どちらのことだったろうか。
    彼女も余命売買をして過去戻りしている側の人間なので、そこは脚本上では答えがあるのだろうけど、わたしの中では不透明。
    過去戻りをし過去を変えると、他人の生死までも左右する。
    漫画家さんが過去戻りをし過去を変えたことで、派生的に友人達の人生も変わってゆく。
    彼女は直接的には漫画家さんを救っているのだけれど、漫画家さんを救うことで過去を変え生きてて欲しかったのはそして結婚したかったのはジュンの方だったのではなかろうか・・・。
    この辺りの女心の妙は思考をくすぐられて面白かった。

    今を大切に、ないものを欲しがるばかりではなく今手にしているものを大事に、結果だけ欲しがっても何も身についてなければ価値がない、大切なのは結果ではなく過程である、過去を振り返ってばかりいないで今を未来を見る、傍にいてくれる人を大切にし感謝する。
    どうしても設定が細かいと色々と思考してしまいがちなのですが、細かい設定云々は横においといて。
    最終的に導かれたテーマは、とても共感をおぼえる良きものでした。
    そうあれる人生を歩めるように心がけたい。

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    2020/10/12 23:14

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