馬留徳三郎の一日 公演情報 青年団「馬留徳三郎の一日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    大変笑えた。山村の過疎の老夫婦宅に、東京にいて何年も帰らない息子の、部下を名乗る男がやってくる。オレオレ詐欺師らしい。老父は金に困っているなら仕事を紹介するといい、それがなんと「ロシアのスパイ」。金髪美人にロシア語を習える、という。怪しげなロシア語まで操り、爆笑した。
    いっぽう、近所の親子三人が用もないのに何度も来る。最初は詐欺師に、息子の部下なら息子の似顔絵をかけという。詐欺師を追い詰めるかと思うと、だんだんこの親子自体がおかしなことを言い始める。別々にやってきては、息子は両親がボケ始めえてるといい、両親は息子が若年性アルツハイマーだという。互いに、相手が逃げた、行方不明だと言っては助けを求めて、混乱させる。
    かと思うと、別の村人が「この家の息子は死んだ。あんた調査が足りない」といい出し、老妻は「いや、生きてる。今海外で商社マンだ」と。
    いつの間にか、詐欺師は家の息子に扱われ、甲斐甲斐しく朝食を作る…。

    同じ人でも、出てくるたびに言うことが変わる。コントの連続のようで、笑いにはことかかないが、なにが真実かというと、つかみどころがない。すべての解釈をするりとかわす、軟体動物のような舞台。老人役の三人が、自然体でユーモアがあって良かった。これは痴呆化(高齢化)進む日本の桃源郷かもしれない。ボケても人は幸せに生きていけると。

    途中の場面の区切りに、テレビの甲子園中継の音が効果的に使われていた。冒頭の老人の会話からして「加山雄三と歌丸は同じ歳だぜ」「嘘だろ」と、懐かしい昭和ネタでくすぐっていた。歌丸が司会の「笑点」といい、甲子園テレビ中継と言い、古き良き時代のノスタルジーをくすぐる。高齢者を描くツボにはまっていた。

    ネタバレBOX

    個々の話は繋がらないので、どうやって終わるのかと思った。最後はリアルで幻想的で切ない終わりだった。
    老妻が老夫に「どちら様ですか?と、急に認知症がひどくなる。そして、二人が知り合った高校時代、高校球児だった夫が、県予選の決勝で負けて甲子園に彼女を連れて行けなかった悔いを告白する。妻は(ボケているので)、決勝で勝った思い出を語りだし、夫も同調。ふたり、かつての破れた夢の記憶を塗り替え、甲子園に行った恍惚に浸るなか、暗転。

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    2020/10/08 22:28

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