満足度★★★★
鑑賞日2020/09/28 (月) 18:30
座席1階
演出の斎藤理恵子さんがパンフレットで書いているように、ここに登場する男も女もとんでもない奴らばかりなのだ。青鞜社をつくった平塚らいてうとその周囲の女たちの物語だ。大杉栄などは自分勝手な女たらしもいいところで、今の時代なら絶対に糾弾されている人生だった。そういう意味では、時代に抱かれて自由に生きられた男女であった。
でも、さすがに「とんでもない奴ら」と切り捨てた女性演出家だけあって、伊藤野枝に厳しいところが随所に出てきて興味深い。自分の印象では野枝はバリバリ働いて自由奔放好き勝手に時代に背いている女性、という感じなのだが、この演出家はまるで時代劇に出てくる力なき女のように、よよと泣かせる場面をつくったのだ。
群像劇だから例えば島村抱月とか松井須磨子とか荒畑寒村とか、それぞれの場面を描いている。だがやっぱり、もっと野枝に絞って展開したほうが面白かった気がする。いっそのこと伊藤野枝物語にして、史実にはでてこないような野枝の素顔を膨らませて客席を楽しませるという切り口はあるかな、と思った。