「ロマンス」「逢瀬川」 公演情報 ★☆北区AKT STAGE「「ロマンス」「逢瀬川」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    本公演は、★☆北区AKTSTAGEの「ロマンス」とナイーブスカンパニー「逢瀬川」のコラボ、そして自分は後者を観劇。「逢瀬川」には人間四部作 第一部「献身」の副題が付いている。

    冒頭、瞬時に物語の底流を想起させる、実にうまい掴みだ。また大音響と早口で捲し立てる台詞は、つかこうへいの演出を彷彿させる。この圧倒するような場面、一方、情感溢れる場面を巧みに構成し物語の世界に誘う。

    コロナ禍にあっては仕方がないのかもしれないが、途中の換気によって(芝居は中断しない)、流れが少し停滞したように思えたのが残念。とは言え、観応えは十分だ。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    素舞台…登場人物はわずか5人。にも関わらず壮大な人間ドラマを紡ぎだす。冒頭、大音響で「白鳥の湖」が流れ、同時に緊迫したアナウンスが聞こえる。

    改めて1人の男が言う。第二次世界大戦終結時にイギリスのチャーチルが2本指を立てた。今でこそ「ピース」サインとして広まっているが、この2本の指を広島、長崎と言いながら立てる。そして新たな平和として福島を加えたいと3本目の指を立てる。
    ちなみにチャーチルはVictoryの頭文字を意味していたという説が…。

    梗概(説明から)…2020年東京オリンピック水泳男子100m自由形 日本代表・喜多村心九郎。かつてスターと呼ばれ、地元福島のオカマ達から絶大な人気を誇る心九郎の宿命は、100m44秒──通称『死の壁』を超えること、その宿命の重みを、誰よりも理解する妻・いつみと共有する。そして家族を持つことだが…。
    説明にあるように”オカマ”達からの絶大な人気ー つかこうへいの作品にはLGBT等を思わせる人(少数あるいは弱い立場の者)達が登場するが、本公演では別の意味合いを持たせている。それは、いや その前に広島県・長崎県・福島県に共通していると言えば、放射能汚染を連想する。もちろん戦争時の被爆か災害被ばくかの違いはあるが、どちらにしても”被曝”。これは本人だけではなく子孫にも影響を及ぼす。だから子孫を残さないための”オカマ”へ。しかし人間の本能を押(圧)し殺した行為であることは、風俗店通いをしていることで暴かれる。

    物語の中で、「黒い血」という台詞が何度となく繰り返される。「黒い血」=「黒い雨」(井伏鱒二)を連想し、単なる台詞ではなく人間の尊厳を象徴する、そんな鋭く重みのある”言葉”だ。同時に物悲しく響き聞こえたのは錯覚であろうか。東京オリンピックを通しての繁栄、一方、いまだに東日本大震災における復興は続き、原発の影響下にある地域・人々の苦しみ。

    喜多村心九郎は、周りに迎合せず自分の信念に従って生きる。この地において愛する人と結ばれ親になる。その普通の日常生活を送ることの困難さ。そして生まれた子はずっと入院したまま退院の見込みすらない。この「個人」の視点から「社会」の”理不尽”をしっかり捉える。自分は、チラシにある「Olympism is a philosophy of life. オリンピックに翻弄された者たちが辿り着く『人生哲学』を軸に、人々の持つ当然の権利と、その当然が脅かされる理不尽が共存する社会における、人間のあり方を問う。」は、この公演によって現在の日本の状況を端的に描き出す、と解釈した。

    役者陣は登場人物像をデフォルメして演じているが、だからこそ主張すべき点がしっかり伝わる。息苦しい背景であるが、その環境下に悲観するでもなく、真摯に前向きに生きようとする。誇張した演技はその力強さを示すためのもの。全員が好演であった。特に喜多村心九郎(草野剛サン)の水泳シーンは圧巻であるが、同時に清々しさを覚える。

    最後に、アンサンブルとして白濱貴子さんが出演していた。自分が観た回は、2回ほど名前を呼んで新人女優であることをアピールしていた。彼女は★☆北区AKTSTAGEの卒業公演「売春捜査官」でも観ている。今後の活躍を期待したい女優である。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2020/09/12 16:35

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