社会の柱 公演情報 新国立劇場演劇研修所「社会の柱」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    今月イプセン2作品目。めったに上演されることのない『社会の柱』が新訳で観られて幸せでした。

    ネタバレBOX

    船工場を営み、領事として尊敬される男が、米国から帰国した元友人で妻の弟に若い頃の悪事をばらされそうになるものの、米国の船主から修理を急かされたため修理したかのように表面的に繕っただけのインディアンガール号にたまたま乗って米国に戻って事業を整理してこようとしたのを幸いに、元友人が死んでもよいと思い出航許可を出したところ、自分の息子がおじさんに憧れ密航しようと同号に乗ったこと、元友人は別の頑丈な船に乗ったことを知り、鉄道開発を前に土地を買占めたのも息子に資産を残すためだったのにと、船工場の信用も含め全てを失ったことに絶望するというところで、急遽一転。工場長が独自の判断で出航を差し止め、妻が隠れていた息子を探し出していたことから、男は市民の前で過去の過ちと私欲のために土地を買い占めたことを謝罪し、その上で土地売却事業を株券にして希望する市民に交付し、利益を分かち合おうと提案したのでした。

    超リアル、今日的な話でした。

    技術者が反対したのに上層部が発射させ、その直後に爆発したチャレンジャー号の事故を想起しました。舞台は140年前のノルウェーですが、現在と変わらない経済活動をし、職業倫理を問う話でした。領事の命令に反し、技術者倫理を貫いた工場長を尊敬します。新型コロナウイルスの検査を求める医療現場からの要望に対し厚労省の指針に縛られ過ぎて検査を認めない保健所も、緊急性の高い患者のために少し拡大解釈するくらいの判断ができないものかと思います。

    ラストを大団円にしたのは意外でした。絶望で終わっても良かったと思いますが、イプセンもそんなことは百も承知だったと思います。株券の発行という経済活動を啓蒙するため、また1877年当時としては道徳的に改心する姿を見せることが必要だったのかなとも思いました。

    因みに、社会の柱とは、元友人と一緒に帰ってきた妻の異父姉のセリフによると、真実と自由とのことでした。

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    2020/02/27 00:36

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