満足度★★★★★
鑑賞日2020/02/13 (木) 18:30
座席12列22番
アーサー・ミラーは人間の欺瞞を、正面から描き切る作家である。登場する人物は、何かに自身の価値観を依拠し、自らの行為を正当化し、自己の責任を回避する。それを暴くのは、ただ事実のみ。事実が虚栄を剥がし、逃避を遮る。
彼の描く欺瞞は、善悪の対象でもなければ、弱さへの非難でも、ましてや自己の復権への機会でもない。ただ、そこに現出し、時には人を滅ぼし、時には人を排除する。
舞台に終始転がっているリンゴはそのうち腐り果てるだろう。まるで登場人物1人1人を象徴するように。だから、リンゴは顧みられこそすれ、けして片づけられないのだろう。
恐ろしい舞台だ。