『どんとゆけ』 公演情報 渡辺源四郎商店「『どんとゆけ』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/02/09 (日) 15:00

    はるばる観に来たのは、2009年の広島公演以来。覚えていたのはオムライスのくだりだけ、初めてみるような衝撃だった。

    社会がどんなに変わって行っても、このような短絡的な凶悪犯罪を犯す人間を一掃することは出来ないであろう。であれば、何の罪もなく殺されてしまう側の家族の恨みも続く。
    深い、深い、取り返しのつかない恨みを、どうしていけばよいのだろう。

    裁判員制度の発足を契機に創作されたこの芝居、昨今の凶悪犯罪の加害者のニュースを見るたびに考えるもやもやを、改めて考え直させられる。
    日本には死刑制度はあるが終身刑というのはないという。

    ネタバレBOX

    刑務官につれてこられた犯人青木和也の死刑囚オーラがハンパない。恐れと絶望が彼の周りの空気を凍らせるよう。
    息子と二人の孫を殺された父親、夫と二人の幼い息子を殺された妻の前で、刑務官が死刑囚の人権を守るための規則を申し渡していく。

    侮辱してはならない、死刑に際して苦しみを与えてはならない。そして最後に食べたいもの・・オムライス。オムライスは殺された夫と息子たちの大好物だったと反対する妻。
    義父になだめられ、死刑囚の青木は舞台上で本物のオムライスを貪るように食べる。ケチャップの匂いが客席まで漂う。

    最後にやりたいこと・・トランプゲームの「ゴニンカン」。(コメント欄参照)これは青森地方だけでよく遊ばれるゲームだという。このゲームから先に思いついたんじゃないかと思うくらい巧い設定だ。
    オムライスが好きで、家族でゲームをした時に姉ちゃんに助けてもらったという青木。子どもを含めて3人を強盗殺人で殺したというこの若い男がなんだか可哀そうになってくる。

    それに反して、徐々にいらだちを募らせるのが被害者の妻。家族のその後を知らないという青木に、彼の起こした事件のために、なかよくゲームをした家族は急死や自殺に追い込まれ、可愛がってくれた姉は、結納まで交わした結婚が破談になり、市役所勤めもできなくなって、いまは川崎のソープで働いていると。犯罪者家族の悲劇は近隣では知らないものが無いと吐き捨てるように告げる。

    「そんなに偉いんですかね、被害者さまというものは」という青木しの台詞に衝撃をうける。家族を殺された者には、絶対の正義があるのだろうかなどと、考えてみたことも無かったからである。

    しのと二人きりになった時に「逃がしてくれ、一緒に暮らそう」とすがる青木和也(二人は獄中結婚している)。
    大丈夫だから安心してと、死刑執行をうけるように諭す彼女。しのは、青木を優しく抱き寄せる。(上演時間78分)

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    2020/02/11 12:39

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