満足度★★★
いいところもあるのだけれど、一言で言えば「なんか盛り上がらない」。これは劇作教本的に言うと、起承転結の、「転」における直前と最高点の落差が小さいということになる。一番盛り上がるのが「承」にあたる1幕の終わりの米国西海岸のビーチ場面。悪魔(田畑智子)と契約したフォーチュン監督(森田剛)が、なんでも思いのままにできるからと、嫌味な映画プロデューサーをヤギに変えたりして、相手を震え上がらせるところ。
その後、2幕では、契約してまで手に入れた恋人マギー(吉岡里帆)が去っていく(フォーチュンはなんでもできるのに、あえて止めない)など、あとは破滅へ一歩一歩進むだけで、展開が一本調子。
さらに言えば、動きが小さくて、大劇場の広い舞台を埋められていないのも、印象を弱くする。
田畑智子の悪魔は、蠱惑的で、妙な明るさの裏に荒みがあって、素晴らしかった。