『国府台ダブルス』  公演情報 filamentz「『国府台ダブルス』 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    笑えた、笑えた。卒業式の「日の丸」「君が代」をめぐるシチュエーション・コメディー。今の日本のどこにでもありそうで、ここまでのしっちゃかめっちゃかはない。最初は「わざとら」や一本調子に思えたが、一癖も二癖もある脇役が次から次へと乱入してきて、笑いが弾けるようになる。

    全く初めての集団だったが、この笑いのセンス、タイミングはなかなかのもの。周りみんながジコチューだったりちょっとネジの外れたボケ役の中、一人ツッコミ続ける津和野諒(宣言美術も担当の才人)が笑いをもたらす。なるほど、ツッコミの効果はこういうことか、と改めて発見した。クライマックスの彼の告白も爆笑。

    役に立ちそうで全く立たない自己陶酔型美術教師の中田顕史郎、お節介サヨク保護者の前田綾香、前任校の卒業式が気になって本校では全く自己というもののない教師・矢吹ジャンプなど、など。ひとりひとりの登場人物にリアリティーと説得力があった。生徒の役よりオトナの役にそれはいえる。

    模造紙に立派な式次第を書くたびに、簡単に破いて捨てるという、潔い演出も、盛り上げに大いに一役買った。情けない美術部員の土橋銘菓、「ミュージシャンですから」が口癖の吹奏楽部長・淺越岳人も笑わせてくれた。

    こう書くと、主役が脇役に食われたかのようだが、そんなことない。国旗・国家実施派の校長と女性英語教師、反対派の生徒会長・熊谷有芳(衣装もやっていてびっくり)、そしてなにより、板ばさみになる卒実委員長の榎並夕起が、しっかり舞台の柱になっていた。アイドル役の雛形羽衣もよく目立っていた。



    ずっと卒業式のステージ裏だった舞台が、最後の方で、ステージ正面の演壇もバックに現れるという方法もよかった。放送室がすっと現れる装置も、いいアイデアだった。終盤に二転三転するプロットも見事。作・演出の富坂友も抜群のセンスの持ち主である。

    ネタバレBOX

    真っ白な絵が出てきた時、解決策が思い浮かんだが、それを忘れるくらい途中の展開に引き込まれた。
    それにしても、この騒動、どうやって最後に回収するのかと思っていたら、卒業生田中翔が最後に示す見事な解決策に感心した。これは思いつかなかった。

    日の丸・君が代問題ということで、結局、作品の思想的立場はどうなの、と言う向きもある。しかし、もはや卒業式の国旗・国歌騒動は、善悪ではなく、茶番の世界。それはかたくなに拒む側にも言える。作品の思想を問うのは、押し付け側の「踏絵」と同じ発想に陥ること。そこをユーモアと機転で笑い飛ばすことに、袋小路から抜け出す可能性が見える。今回のような解決策をやる学校が本当にどこかにないかなあ。

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    2020/01/24 09:00

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