Andorra 公演情報 アンドラプロジェクト「Andorra」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    鑑賞日2020/01/18 (土) 18:00

     開幕と共に、渡部朋美の甲高い笑い声。この声によって、終幕まで異様な不快感に悩まされ続けられる。(これ、褒めています)その声を発する兵士の死んだ魚のような眼と、無機質でありながらただただ腐臭めいた存在、いつその沈黙が崩れかねないという危うい暴力性の胎動。なんともはや、この物語に潜む差別とプロパガンダの醜悪さを、全てこの兵士は体現していたのだな、と終焉後に思い至る。その意味では、この舞台でストーリーを追うことの無意味さを、バイリンガル演劇という実験を、確固たる演劇として成立させていたのは、この兵士なのだ。
     
     舞台上の演劇自体は、何とも終始取っ散らかっている感じが否めない。これはこれで、兵士に表象された意図的な不快とは異なる、何とも観客にとって居心地の悪い不快。
     脚本がよいものであることは、すぐに判る。
    ただ、演者がたびたびセリフに詰まったり間違えたり、あまりにつたない演技と姿見も見ないで出てくる役者気質の欠如を目の当たりしては、ただただ断続的な失望を感じざるをえない。物語へ浸潤しようとする私の意識は、そのたびに無味乾燥した空気に晒される。舞台が殺風景な空間に化す。
     この原因は、けして、ハングル語と日本語の混合が生み出したものではない、演出か役者の力量か、何かが足りないのだと思う。

    さて、描かれる物語。それはプロパガンダによって、差別・排他を正当な慣習として受け入れる民衆の醜さだ。アンドリのユダヤ人としてのレッテルは、彼がユダヤ人ではないという事実によって報われはしない。それは、愛する者と結ばれる方途を完全に閉ざすものだから。アンドリの存在は、社会生活で人間が病まざるおえない差別という宿痾の象徴なのである。

    妻鹿有利花の演技は鉄板。停滞しがちな舞台のよい潤滑油となっていた。ローティションの関係で、小八重智の演技が観られなかったのが残念。(シルエットのみの出演)
    菅沢晃はちょっと、どうしちゃったのかな。何か足りない。

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    2020/01/21 14:34

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