新年工場見学会2020 公演情報 五反田団「新年工場見学会2020」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    今年は初日の工場見学。昨年までは思いもしなかったが幅狭の椅子に3時間の長丁場を嫌って「ザ・ぷー」の出ない初日を選んだ。周りを見れば、以前は散見したご高齢のお人は今回一人も見当たらず(私の目には)、せいぜい自分より年下だろう年増の類が数える程。若者率の高い劇団は他にもあるがここは少し雰囲気が違う...と話し出せば長くなりそうなので割愛。

    黒田大輔不在の為、「なあ大輔洋介・・」と二人に声掛ける前田司郎という図が見られず、それを気にしたネタ、というより本音トークを最後までやっていた。
    演劇の方は二つとも基本パロディだが、五反田団はネタとして入れ込む感じ、ハイバイの方は劇全体でパロってる感じなのが、毎年変わらぬ両者の棲み分けで今回もそれは見事。芝居も中々であった。
    五反田団は「こんか~つ、こんか~つ」(ちりりん)という売り声で自分を嫁として売り歩いてるシーンに始まり、日本を代表する男女を集めたという(笑)「婚活パーティ」を舞台に陰謀が交錯し、毎度の血しぶき(紙)舞う活劇。初代伝説の婚活荒し(的な名称、忘れた)に内田慈、彼女とまぶダチの二代目に西田麻耶。主人公である二代目が小泉進次郎+滝川主催の婚活パーティで他の女性らを先導しながらヘナチョコ男性ら(と一蹴する感じでもない微妙な線がいい)を物色するシーンのリアルなコメントが笑える。けなすばかりが能でない、フォローしつつの己もチャンスに掛ける部分あり、という気合の漲り方が、虚実(舞台と現実)の境界を行く。それが(それが特徴とも言える?)五反田団の醍醐味か。
    一方岩井秀人作は年末までやってた出演舞台を終えた僅かな時間で作ったという、ガチンコファイトクラブという番組のパロディ。「伝説の俳優」(冒頭マイクを持ったナレーション役が、ハイバイ初期の公演で「7~80人」の観客を沸かせたというエピソードと共に紹介、演じる役者がその本人かは不明)が集った荒くれ者の一人から食らう「お前誰だ」の一言から始まる。番組そのものを笑っている訳でもあり、垣間見える人間性を視聴者目線で笑っている訳でもあるが、大げさで作り物っぽくても真実らしさがあり、それをまともに食らった衝撃を緩和するために笑うのでもある、あの番組の美味しい所を舞台でリアルに再現という趣向であった。これを見たさに最終日も行こうかと迷った。(初日は若干粗かったので)
    合間には「トラディショナル」な獅子舞現代アレンジの出し物、休憩時はこれも毎度のホットワイン。という事で雑煮で腹一杯の正月時間であった。

    ネタバレBOX

    「笑い」の難しさ。五反田団劇では師岡広明がそのノリをうまく真似た山本太郎(ラッパーよろしく手のゼスチュアと関西弁で熱く語る)が過激派となり、グレタもグリンピースのボートで登場という具合。一方前田本人が滝川クリステルと並んで「殆ど何も言ってない」小泉進次郎をやる。山本太郎はマイノリティを背景にしており、パックスロマーナ時代の見かけの平和と抑圧された周辺との対比が現日本にも当てはまる様相で、「吠える側=過激派」VS「狡かったり無能だったりするが床の間に据えておれば平穏な体制側」の構図では不公平感が過ぎる。「そういう事は置いて、笑いましょう」が通りづらいな、との正直な感想。
    後日寄席の初席に寄った際、ニュースペーパーがよく考えたテレビ報道のもじりネタの後、共産党志井委員長を登場させ喋らせるのだが、万年野党、反対ばかり、ソ連中国にシンパシー、といった古いいじりネタをまだやっていてそこが笑えず、そうして下げる所を下げておいて最後に反論できない正論をかます、という折角の手法が、もう一つであった。これも時勢の捉え方に影響される部分。寄席などに来るのは良識あり平和を好む人たち、「正論かます」の比率を上げても行けるのでは、と思ったが一方、足元をすくう少数派(電凸要員)が場を荒らす時代、ネタの出し方にも自主規制が働く必然の成行きを思う。
    もう一つがアゴラで観た『ポポリンピック』だが(レビュー未投稿)、オリンピックを軸に、不幸な生い立ちの天才ボーリング少年(後に青年、後に中年)の物語が描かれるが、話題になるのが2020年オリンピック。後半「選考から外れた種目たち」のささやかなイベントをポポリンピックと名づけて打ち上げようとするが世間に「不協和音」と受け止められ、その事態に彼らは「アンチと思われてるよ、これ」と落胆するくだりがある。オリンピック開催そのものに反対する人らを一つのグループとして忌避し、「やつらとは違う」という論法で、自分たちが如何に純粋にスポーツを愛する心でこれをやっているかを強調するアイテムとして台詞に組み込んでいた。オリンピックに賛同しない私などは、そんなグループねえよ、と居心地が悪くなったが、政治ネタ社会ネタを「笑い」に変換する難しさを実感する時代になった、とある種の気づきを得た。一つのバロメータとして笑いを観察して行く所存。

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    2020/01/06 10:33

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